手を伸ばした
手を伸ばした。
でも、届かない現実もあるのだと知った。
いや、知っていたのに、手を伸ばした。
皆、手を伸ばしていた。
まるでライブのように。
ある少年に向けて。
ビルの上に立つ少年。
匂いで思い出した。
あの少年だと。
骨と皮しかないように見える足と腕。
トワイライトで薄氷の肌が照らされてる。
少年の目線の先には、うっすらと見える三日月。
私の耳に聞こえるのは警察のサイレン。
音が流れて、皆が手を上げて一点を見上げる。
少年は一歩引いた。
安心した。
もう遅いのだろうけど。
警察が続々とビルに入っていく。
赤い光に辺りが包まれる。
お願い。
お願い。
誰に祈っているわけでもなく、ただ手を合わせて空を見上げる。
子供が死のうとしてたら、私はこうするしかなかった。
もっと有機的に動けるものだと思ってたのにな。
私は無関係だからかな?
分からないや。
分かりたくないや。
答えはここには要らないや。
あの子には生きていい答えが必要。
私の答えは、あの子の答えになり得るだろうか。
ならないだろうな。
だって私の生きてる理由は娘だから。
あの子には重すぎる。
そう思った。
思っただけで身体は別に動こうとはしなかった。
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