第4話 エルフの国からこっちへ丁稚(01)
第一話
日本のちっちゃな町に住んでるごく普通の主婦、瑠花さんの家に、ある日とんでもないお客さんがやってきた。銀色の長い髪にエメラルドグリーンの瞳、背の高いイケメンなその人は、なんとエルフ!
「別の世界から、神さまのお告げで料理を習いに来ました」と真剣に言うヤバいエリアスに、瑠花さんは絶句。でも、あまりにひたむきな姿に、「まぁ、いっか」と台所に招き入れた。
どうやらエリアスの世界では、食事は神さまへの感謝そのものらしい。パンを焼くのだって、お祈りしながらじゃないとダメ。「心を込めてこねるのが神聖な言葉になるんです」なんて聞かされて、瑠花さんはちょっと戸惑いつつも夕飯の準備を始めた。
その日のメニューは、肉じゃがと味噌汁。エリアスは初めて見る調味料にてんやわんや。玉ねぎを切って瑠花さんが涙を流すと、「これは罪を償う涙ですか?」ってマジで聞くもんだから、瑠花さんは大爆笑。「ただの玉ねぎよ!」って教えると、エリアスもホッとした顔で笑った。
じゃが芋の下ゆでに電子レンジを使ったら、「この中から、とんでもない魔法エネルギーを感じます! 魔王に対して使えば、一度で撃退できますね!」
瑠花としては、魔王が電子レンジの中でホクホク湯気を立ててるシーンしか、思い浮かばない……
やがて台所からいい匂いが漂ってくると、エリアスは目をうるませて、「これは祈りを超えて、心に染み渡る香りです…」なんて、手を組んで感謝の言葉を述べ始めた。瑠花さんはちょっと照れくさかったけど、一緒に食卓についた。
初めての肉じゃがを一口食べたエリアスは、ゆっくり目を閉じて一言。「甘さと塩味が許し合っている…まさに神聖なるハーモニーです」そのまっすぐな言葉に、瑠花さんの胸はなんだか温かくなった。毎日をただ繰り返す中で、いつの間にか忘れていた大切な気持ちを、エリアスが思い出させてくれたみたい。
こうして、平凡な主婦と異世界から来たエルフの、不思議で笑いいっぱいの日々が始まった。交わるはずのなかった二人の食卓で、新しい物語がゆっくりと紡がれていく。
今日のレシピのコツ
肉じゃがは、三十秒ほどジャガイモとニンジンを電子レンジで下ゆでしてから、関西地区なら牛肉、関東地方なら豚肉&タマネギといっしょに炒めると、早く出来上がります。
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