第14話 不穏な足音 ②
「この国が乗っ取られたとは? また随分と物騒な話だな。」
俺達ソードアックスの四人と、助けた二人の女の子と共に東へと進んでいた。
礼儀正しい女の子の足がくじいていたらしく、メロディのヒールで治したので、今は普通に歩ける様になっていた。
街道を歩きながら、事の発端などを聞いてみた。
「なぜあんな兵隊に追われていたんだ?」
「その前に、先ずはわたくし達の素性をお伝えしなければなりませんね。」
そうか、言われてみれば確かに。
「では、自己紹介から、俺の名はジョー。冒険者で戦士だ。」
「俺はバーツ、元傭兵で今は冒険者を生業にしている。斧戦士だ。」
「私の名前はメロディ、冒険者で精霊使いよ。回復魔法も少しは扱えるわ。」
「俺はフォルテ、冒険者で戦士、メロディとは同郷だ。」
俺達が先ず自己紹介し、こちらに害意が無い事を示す。
その次に女の子達が自己紹介をするようだ。
「わたくしの名前はネリーと申します、一応この国の王女です。」
それを聞いた俺達は、一斉にどよめき立つ。
「「「「 ええ~!? ネリー王女様!?」」」」
次にもう一人の女の子が自己紹介を始めた。
「あたいの名はベル、王都を根城にしてたケチな盗賊さ。こう見えて成人したドワーフ族だよ。」
「ドワーフか、確かドワーフの女は見た目が幼いって聞いた事があったな。」
「それで合ってるよ、幼く見えても酒は飲めるからね。」
バーツさんは物知りだな、やっぱり頼りになるリーダーだ。
ふーむ、ベルは見た目が12歳ぐらいの幼女に見えるが、これでも成人しているらしい。
しかも盗賊って、姫と盗賊の組み合わせってのも、意外性があるな。
「さて、聞きたい事は山ほどあるのですが、話せる範囲で構わないので、どうして追われていたのか、その辺りから話して頂きたいのですが。」
バーツさんが丁寧に聞き、相手に話を促す。相手は王族、言葉使いも丁寧になるってもんだ。
「それならあたいが話すよ、姫様はまだ事の真相って奴に困惑しているみたいだしね。」
「解った、頼む。」
「あいよ、事の発端はあたいが牢屋に入れられた事から始まりだ、まあ、サイコロ賭博でイカさましてたのがバレてってのが恥ずかしいが。」
「そういやああんた、盗賊だったな。兵隊相手にイカさまとは、度胸があるというか、アホというか。」
「あっはっは、まぁそんな訳で、牢屋に入ってたんだが、その隣の牢に姫様が居たじゃないか。びっくりして事情を訊いたら、どうやら宰相のゴッタがロファールの王城を我が物顔で私物化してるらしいってんで、牢屋に閉じ込められていたらしいんだ。」
「宰相のゴッタか、あまり良い噂は聞かんな。」
「ああ、奴は真っ黒だよ。その証拠にあたいみたいな盗賊が王城に出入りしても誰も咎めないし。で、王妃のリーザ様も幽閉されていて、ロファールの軍人さんは迂闊に動けない状況だったんだ。リーザ様は人望もあって兵隊さんに人気があるから人質を取られているのと変わらないからね。」
ベルの話を聞くと、どうやら黒幕はゴッタ宰相らしいな。
「軍人全てが敵か?」
「いや、そう言う訳でもない。ロファール陛下が遠征で国を離れているから、リーザ様を慕って残った兵士も居る、だがそのリーザ様が幽閉されているから、迂闊に動けないのさ。」
ここで、ネリー王女も話に加わる。
「わたくしの事も慕ってくれる兵士も居ます。そうした兵達も家族を人質に取られ、身動きが取れない状況なのです。」
「ふーむ、話を聞くと、そのゴッタという宰相は悪人だな。」
俺が言うと、みんな頷き、話を進める。
「今、王城に居る兵士はゴッタの私兵で溢れている、正規の軍人は陛下と共に遠征に行ったのが殆どで、あとは地方へ飛ばされて王城には居ないのが今の王城の姿だよ、ゴッタは間違いなく私物化してるね。」
「誰かがゴッタを拘束しなかったのか?」
「無理だね、ゴッタの私兵は数が多い、城内のバランスはゴッタに傾いているよ。」
「それで、国が乗っ取られたという訳か。」
「そう言う事、で、あたいとネリー姫で牢を破り、抜け出してきたって訳さ。」
なるほどな、そういうからくりがあったのか。
「じゃあ、さっき追って来た兵隊は、ゴッタの私兵って訳なんだな。」
「その通りさね、だけど指揮官はゴッタの息のかかった者だけど、兵士はただ命令に従っただけだからね、あんた等が命を奪わなくてほっとしてるよ。」
やはり、人命優先にして正解だったな。事の真相を確かめるまでは、迂闊に事を荒立てたくはないしな。
「話は解った、それで、ネリー王女様はこれからどうされるおつもりですか?」
バーツさんが尋ね、姫様が答えに思案しているところを、ベルが答えた。
「うーん、そうですわね………………。」
「姫様、ここはいっその事、彼等と共に行動し、マーロン伯の所まで行きましょう。マーロン伯様ならば、姫の言葉を聞いて、力になってくれる筈だよ。」
「そうですわね、そうしましょう。」
だがここで、バーツさんが暗い表情で答える。
「姫様、非常に言い難いんだが、今は無理っぽいぜ。」
「なぜですか?」
「王城が大変な目に遭っているのは同情する、だが、マーロン伯領も今は問題を抱えている状況でな。」
ここで俺が話に加わる。
「山賊共が暴れ回っているんですよ、マーロン伯領で。とても王都へ兵を派遣する事は難しいと思いますけど。」
「そ、そんな。では、どうしたら。」
「まぁ、話だけでもしてみれば良いじゃないですか、マーロン伯なら何か良い案を提示してくれると思いますよ。」
バーツさんが言い、メロディが続く。
「そうそう、それにゴッタとマーロン伯の仲の悪さは今に始まった事じゃありませんからね。ゴッタが悪さしたら、マーロン伯が取り締まる。これ決定ですよ。」
「そうでしょうか、だと良いのですが。」
「まぁ、兎に角、先ずはマーロンの町までご一緒しましょう。俺達は別に構いませんからね。」
「そう言って頂けると助かります、道中、宜しくお願い致します。」
ネリー姫が頭を下げ、ベルがみんなを見据えているので、俺達は快く頷き、姫様を護衛する事を了承した。
「マーロンの町まで、御一緒しましょう。姫様の守りは一人より五人の方が良いでしょう?」
「はい、ありがとうございます、みなさま。」
うんうん、姫を守るとは、中々の大役だが、これでマーロン伯に直接会える事が叶いそうだ。
俺の目的は、山賊の討伐に事態を動かして貰えればそれで結構だからだ。
フォルテとメロディの目的も、海賊討伐に動いて貰いたいという事だし。
ここでネリー姫様の事もあったとなれば、マーロン伯には頭が痛い案件だろうが、俺達にとっては寧ろ好都合だ。
兵を動かして貰えれば、山賊や海賊の討伐も時間を掛けずに事を運ぶ事が出来そうだぞ。
まあ、王都の問題を解決する為の、ついでという事ではあると思うが、これでまた一歩前進したと思いたい。
俺達は街道を東へ進み、マーロンの町目指して進んで行く。
俺達のパーティーに二人の仲間が加わった、と言っても、臨時だが。
一人はこの国の王女、ネリー姫様。父親から剣の手ほどきを受けたらしく、プリンセスナイトとしてお役に立てると言っていた。
まあ、姫様なので、あまり無理はさせられないが、一人にするのも駄目だと思う。
そして、もう一人はベルと言うドワーフの女盗賊、ナイフを装備しているが、基本は戦わず鍵開けや敵感知に罠感知、その解除や潜伏など、シーフとしての役割が適任だ。
何より、女の子が増えたのが大きい。男としては嬉しい限りだ。
俺達の一党も、随分と華やかになってきた、姫様は勿論だが、ベルも意外と可愛いいのだ。
おっと、女好きと思われるのは心外だな、男はみな、こんなモンなんだよ。
まあ、やる気が出るのは良い事だ。だがいいとこ見せようと張り切ったら失敗するのが目に見えているっぽいがな。
慎重に事に対処していこう、まだ何も決まった訳ではないのだから。
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