絶対に気づいてはいけないラブコメ~~ハッピーエンドで必ず死亡する鬱ギャルゲーに転生した俺は死にたくないからボッチを貫く~~
ひすいでん むう(翡翠殿夢宇)
第0話 トキメキめめんともり♡
画面が明るく輝き、パステルカラーで描かれる鮮やかな色彩が広がる。
「なんで今日に限って寝坊しちゃうのかしら」
甘く透き通る音声が流れる。画面には制服姿の少女が、慌てた様子で朝食のトーストを口にくわえながら走り出す姿が映し出される。長いツインテールの金髪が風になびく、人を引き付ける整った容姿、中でも特徴的なのはキラキラと輝く大きな瞳。彼女の名前は「星野舞美」——この街で人気急上昇中の地下アイドル。
そして——
「いてっ!」
角を曲がった瞬間、彼女は何かにぶつかる。画面が揺れ、視点が切り替わる。
倒れた少年の目の前に広がるのは、制服スカートの裾。カメラがゆっくり上に向かい、少年の視点から見上げる形で、舞美の顔が映る。眩しい朝日が彼女の絹のような金髪を後光のように照らしている。
「大丈夫?」
彼女は少年に手を差し伸べる。
「え? アイドルの、マイミちゃん……」
少年は信じられないという表情で彼女の手を取る。立ち上がった彼は、舞美が着ている制服に気づく。
紺色のスカートにベージュのブレザーを合わせる特徴的なデザインは非常に見慣れたものだ。
「ごめんね」
そう言って、舞美は走り去ってしまう。
「え、今の僕と同じ学校の制服……」
少年——主人公——は呆然と彼女の後ろ姿を見つめる。
* * *
場面は切り替わり、大通りの交差点。主人公が信号待ちをしている。
「わーちょっとどいてぇ!」
突然、空から声が聞こえる。主人公が上を見上げると——
ドスン!
何かが落ちてきて彼を押し倒す。目を開けると、そこにあるのは可愛らしいピンクのパンツ。
「この、変態!」
思いっきり頬をひっぱたかれる。
画面が切り替わり、真っ赤な顔をした少女が映る。ボブカットの青い髪に、怒りに燃える瞳を潤ませていた。彼女の名前は「南小鞠」主人公の幼馴染。
照れた顔で叫ぶ小鞠。彼女の頬は薄く桜色に染まっていた。
「何するんだよ、お前が勝手に降ってきたんだろ」
女の子との付き合いなど皆無に近い彼にとって、唯一の女友達に軽口をたたきながら体を起こす。
「うるさーい! バーカ!」
言葉とは裏腹に彼女の顏には笑顔が浮かんでいた。
場面が再び変わり、主人公は赤く腫れた頬を抑えながら校門をくぐる。
そこで彼は、長いピンク色の髪をなびかせる美しい少女を見つける。木の下で紙を持ち、スピーチの練習をしている彼女の名前は「霧島詩織」。
強い風が吹き、彼女の手から書類が舞い上がる。主人公はそれを拾い、彼女に渡す。
「ありがとう。新入生代表挨拶の練習をしていたの」
詩織は微笑みながら言う。
「君も一年生?同じクラスだったらよろしくね」
詩織は満面の笑みを浮かべる。彼女の後ろで、桜の花びらが風に舞う。
突然、画面が暗転し、鮮やかなピンク色の光が広がる。華やかな音楽と共に、画面いっぱいにファンシーなフォントで書かれたタイトルロゴが表示される。
そう、これが噂のゲーム『トキメキめめんともり♡』だ。
プレイヤーは高校生活を過ごしながら、三人の少女とかかわっていく。各種イベントで好感度を上げていくと卒業式にヒロインから伝説の木の下に呼び出され告白される。
ごくありふれた恋愛シミュレーションゲーム。
しかし、このゲームには奇妙なうわさがささやかれている。
『プレイしたものは行方不明になる』
というものだ。それが原因なのか、ゲームは発売からわずか一か月で販売中止。制作会社も解散してしまったという。
これは、ただの噂ではない。
『トキメキめめんともり♡』は実在する。
これは、実際にこのゲームを始めてしまった彼らの物語……
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あとがき
新作、長編ストーリー本日からスタートしました!
小説完結済み、約15万字、50章。
本日から毎日投稿予定です。
呪いのゲームに取り込まれる主人公の物語、ぜひお楽しみください!
過去の作品はこちら!
女子高生〈陰陽師広報〉安倍日月の神鬼狂乱~蝦夷の英雄アテルイと安倍晴明の子孫が挑むのは荒覇吐神?!猫島・多賀城・鹽竈神社、宮城各地で大暴れ、千三百年の時を超えた妖と神の物語
https://kakuyomu.jp/works/16818622170119652893
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