鉄と誓いの果てに
南極闊歩のアデリーペンギン
第一章 帝国、落日にあり
プロローグ
帝都に紅葉が来た。帝国に虐げられる者も、恩恵を享受する者も、それが最後の秋になることを知らなかった。
前皇帝の代から続く西方異民族との戦争は佳境に突入し、帝国中で不穏と死の匂いが広がりを見せていた。
しかし一方で、一人一人が生きる道を探して、自らの運命を歩み始める時期でもあった。
「次の決戦ではお前に隊長を務めてもらう。」
「この私がですか?」
「ああそうだコルタナ。お前が帝国を救うんだ。」
次の決戦か…
前回は上手く行ったが、今回も鉄士団は勝てるのか?…
どうにも自信がつかない…この私が……帝国を救うのか?…
言われた言葉は名誉であるはずなのに…心に湧いてくるのは不安だった。
前回の勝利も、運が良かっただけかもしれない。
……だが、それでも命じられた以上、背を向けることはできない。
晴れ空の下、鍛錬場に立つ彼の手には、いつもより少し強く剣が握られていた。
「カーラ、同じような本を今度買ってきてくれないか?」
「承知しました。アンドレ様。でしたら何冊程ご所望されますか?」
「十冊もあれば十分すぎるくらいだ。」
こんな北方の辺境じゃ、戦術本くらいしか読む物は無いな。
最初は気にも留めなかったが、まるで音楽のように頭に内容が入ってくる。無力な自分にも武器が出来た気がした。
しかし…末弟で病弱というだけで荒屋に住まされる扱いか…カーラが居るだけマシだが
青年は掛けてある帝国の地図を見つめながら、何かを思考し始めた
「あぁっ!待てッ!このクソガキっ!」
「捕まってなんかなるもんか!このパンは私のもんだ!」
数日ぶりの飯なんだ!取り返されてたまるか!速く路地へ!
もう大丈夫…かな。やっとだ…
固くて、しょっぱくて、冷たいパンだった。
でも、こんなに美味しいと思ったのは久しぶりだった。
目元が熱くなってくるのを、少女はどうすることもできなかった
「お前、名前がなかったのか?」
「あぁ…昔から…ない」
「そうか…ならお前は…茶髪だし、エルドレン・ブラウンだ。」
今日から俺はエルドレンか…覚えておこう…
周りの軍団の連中は酒を飲んでるばっかり…俺は…俺はなんなんだろうな…
…腹が減った…
酔った兵士は冗談のつもりだったのか、それとも気まぐれか。
けれど、その名前だけは少年の心に深く刻まれた。
そして少年はテーブルの上のチキンを膝に持ってくると、獣のように喰らい付き始めた
「へぇ…もう秋か…一体いつまで続くのだろうな。」
焼けた屋根の向こうに紅葉が散っていた。
両親が死んだのも、確かこんな季節だった。
あれから何年経った? どれだけ“ユース”は遠くなった?
溜め息しか出てこない…もういい、星空を見上げよう…
どれだけたっても、周りがどれだけ変わっても、星達は変わらないのだから…
青年は床にある粗末な布団に横たわると、星空を観察し始めた
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