ぼっち廃人ゲーマー、ゲーム世界に転生して慎重に無双します ~初めての仲間と歩む最強スタートダッシュ~
@S_R_4
小学校編
第1話 入学式キャンセル界隈
「それではこれより、アルツソプラ第三小学校の入学式を始めます。」
マイクを通して館内にその声が響き渡った瞬間、僕はすべての記憶を取り戻した。
——僕の前世の記憶だ。そして同時に理解した。ここが《ダンジョンアタックオンライン》というゲームの世界であることを。
自分がいつ、どのように死んだのか。どうしてこの世界に転生できたのか。——そこら辺のことはまったく思い出せなかった。
だが、それはもう僕にとって重要ではなかった。
大切なのはただ一つ。 人生を賭けてやり込んできた《ダンジョンアタックオンライン》の世界に、僕が今、生きている。 そして、ゲームスタートの狼煙が今、上がった——その事実だけだった。
簡単に言えば、僕は嬉しかった。嬉しすぎて、それ以外のことは正直どうでもよかったのだ。
また、最強を目指してやり込む日々が始まる。しかも今度は、ゲームではなく本物の人生として——。
この世界では、小学校の入学式からすべてが始まる。まずは小学生として6年間を過ごすことになる。
この期間に対するゲーム内での評判は、正直あまりよくなかった。
理由はシンプル。 ダンジョンを楽しむゲームなのに、ダンジョンに入れないからだ。
適当に最低限のイベントだけこなして、残りはすべてスキップする。これがプレイヤーの約8割を占めていた。
一部の廃人プレイヤー向けの要素として「スキルレベル上げ」が可能だったが、それはひたすら地味な作業。 強さの極限を目指すようなプレイヤー以外は、手を出さないのが常識だった。
だが僕は、どれほど苦行であっても、必ずスキルレベル上げをやってきた。 そしてその仕組みについて、誰よりも詳しいという自信がある。
今、この世界の住人たちがスキルレベルという概念をどれほど理解しているのかは分からない。 だが少なくとも、前世の僕に勝てるプレイヤーはいなかったはずだ。
——さて、回想はこれくらいにして、さっそく行動を開始しよう。
僕はそっと立ち上がると、まっすぐ担任の先生のもとへ向かった。
当然、入学式の真っ最中だったので、会場は少しざわついた。でもそんなことは気にしない。
僕は先生に、具合が悪いので保健室に行きたいと伝えた。
もちろん、仮病だ。
担任のナガル先生は少し驚きながらも、心配そうに僕を保健室まで連れて行ってくれた。 ゲームのときと変わらず、生徒思いのいい先生だ。
そして今、僕はベッドに横になっている。
ナガル先生は入学式へと戻っていった。
頃合いを見て、僕はわざと派手に立ち上がる。
当然、保健室には先生がいる。
2〜3秒の沈黙のあと、間の抜けたような、のんびりとした口調で声が返ってきた。
「なるほどね〜。ローマくん、あなたさては〜、悪い子なのかな〜?」
「はい! 仮病で来ました! よろしくお願いします!」
無駄に元気に、ハキハキと返答する。本当はあまり声を張り上げるのは好きではないし、僕はゲームの時以外はそれほどテンションの波が無いような人間だ。しかし、今この瞬間は、言ってみればゲーム攻略に必要なステップなので、そのためなら苦ではなかった。
ホワイト先生は少し目を見開いたあと、まるで最高のおもちゃをもらった子どものような笑顔を浮かべた。 ……が、それもほんの一瞬。すぐにいつもの優しい微笑みに戻った。
「ローマくん、ダメでしょ〜? そんなことしちゃあ〜。」
でも、それを入学式でやって、しかも私に隠す気もないなんて……ほんとに前代未聞よ。
そのつぶやきがギリギリ聞き取れた。
つまり——僕の狙いは成功したということだ。
ホワイト先生は、とにかくやんちゃな生徒が好きなのだ。 ゲーム時代もそうだった。それはさっき見せたあの満面の笑みを見れば間違いない。
この保健室は、今後も頻繁に利用することになる。だからこそ、最初に大きなインパクトを残しておきたかった。
「はーい! では、ホワイト先生、ありがとうございました! 今後も必要に応じて来させていただきます! 引き続きよろしくお願いします!」
僕は深くお辞儀をして、元気よく保健室を出ていった。
ホワイト先生は呆然としていて、返事はなかった。
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