未来考古学委員会
冴月練
プロローグ
あるところに、天才的な女性科学者がいた。
物心ついたころには、本ばかりを読むようになった。
いつも、つまらなそうな顔をしていた。
彼女の笑顔を見た者はいなかった。
ある日彼女はふと、「原爆とかだと街ごと消えちゃって再利用できないから、人間だけを殺すウイルスがあればいいんじゃね?」という、あまり斬新さのないアイデアを思いついた。
問題は、彼女がそれを作れるほどの天才だったことである。
彼女は1年ほどでウイルスを極秘に完成させた。
ワクチンとペアでこそ、ウイルス兵器は意味を持つ。彼女はワクチンの開発にも取り掛かろうとしていた。幸い、ウイルスの開発段階ですでに、ワクチンの開発方法のめどはつけていた。
ある晴れた午後、彼女はウイルスを実験装置から安全な保管庫に移動しようと思った。
本来なら、細心の注意を払って行う必要のある作業だった。だが、めんどくさかったし、短距離だったから、彼女はガラス容器に入った状態のウイルスを手で持って運んだ。
その時、
「ひっく」
彼女は大きなしゃっくりをした。
自分でも驚いた。もっと驚いたのは、ウイルスの入ったガラス容器を落としていたことだった。割れていた。
彼女は固まる。しゃっくりは止まらない。
研究室のドアが開き、同僚の研究者が「なんか割れる音がしたけど大丈夫?」と聞いてきた。
女性科学者はしゃっくりをしながら、コクコクと何度もうなずいた。
「しゃっくり?早く止まるといいわね」
そう言って同僚は部屋を出て行った。彼女はこれからニューヨークで行われる国際学会に参加するため、空港に向かうところだった。
もちろん、彼女は知らない。
自分が、人類史上最悪の“運び屋”になっていることなど――。
ウイルスは非常に感染力が強い。感染した人間の半径約50mの人間に瞬く間に感染する。それから1週間ほどは無症状だが、その後高熱を出してそのまま死に至る。
死んだ者のウイルスはすぐに無害化するが、それまでに出会った人間はもれなく感染する。
女性科学者はしゃっくりをしながら窓を開け、澄みきった青空を眺めた。
「やっちゃった(ハート)」
彼女は、誰にも見せたことの無いキュートな笑顔を浮かべ、拳で頭をコツンと叩いた。
1週間後。世界は大パニックに陥った。だが、すぐに騒ぐ人間はいなくなった。
人類は、外部と接触のない少数民族を除き、死に絶えた。
それから約500年後。
生き残った人類は、少しずつだが人口を増やし、文明を再建していた。
その中で、人類の繁栄を加速するため研究調査に明け暮れる者たちがいた。
彼らは、「未来考古学委員会」。
失われた技術「ロストテクノロジー」を調べ、その技術を人類の再びの発展のために活かすことを使命とする者たちである。
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