序盤の田舎独特の懐かしさが素敵だが、その後の対照的な人、そして主人公の本当の姿が暗示されている点がとても良いと感じた。個人的には、村の人の姿が描かれている部分がとても解像度が高く、少し胸が痛くなった。全体を通して、理解しやすい世界観、イメージしやすい状況に、現実味を帯びすぎた人の姿と田舎像が、その後の展開において恐らく狂気を助長するものへとなりうるのかと感じた。
田舎に暮らす男が出会った一匹の犬「ジン」。穏やかな日常に潜む違和感が徐々に明かされ、最後に突き刺さる現実とのギャップが秀逸。静かな語り口から滲み出る異常性と、周囲の噂が織りなすサスペンス的構成が巧み。田舎の閉鎖的な空気感と、孤独に蝕まれる心理描写が深く心に残る作品です。