おっさんと少女
独飛
第1話
「う、うああああああああああああ!!」
さて今、なぜ俺が叫んでいるのか。そう思った方も多いのではないだろうか。結論から申し上げよう。
俺は今、穴を落ちている。
そりゃもう、でっけぇ穴を落ちてる。
ダンジョンを探索しはじめて早1ヶ月。
新人である俺はダンジョン内にある宝箱をなんの警戒もなくそれはもう、ルンルンで開けた。
そしたら落ちた。そう足元にあったはずの地面。所謂JIMENが無くなっていたのである。
そして今である。
俺は人生逆転。大きな夢。大きな希望と金!を胸にダンジョンへ潜った。それなのに!!!
まだ、大したお宝も見つけられてない。有り得ないほど高尚な名誉も手に入れていない。絶世の美女とも付き合えていない!
こんなところで死ぬなんて俺の人生設計では有り得ないのだ。
ところで今のところ1分ほど落下し続けているのだが、これは下がどんなにすんばらしいクッションでも、底の見えないような湖でも死は確定しているのでは?え?
「ひょあああぁぁぁ死にたくねえ!ぶぅおっはぁ!」
落下の勢いで湖の中を矢のごとく沈んでいく。
「ガボごぽがぽぽぽぼぽんぶぁ!!!死ぬかと思ったぁ」
何とか俺は水面に上がる。落下位置に運良く湖があったとはいえあの速度で水面に叩きつけられたら死ぬはずなのに不思議だ。
まぁ生きてたしOKだ。さてと、ここからどうやって元いた階層に戻るかだが、、、
「あの、、、大丈夫???」
陸地にいる女の子と目が合った。
「ああ、何とか生きてるよ」
「そう良かった、なら私仲間たちのところに戻るね」
「おお、心配サンキュ。行ってら」
そう言うと黒髪の少女はタッタッタッと小走りで去っていった。
んんん?ん?俺、今誰と話してたんだ。おい待て!俺あの女の子のパーティに寄生すれば出口まで連れて行ってもらえるかもしれない!脳死だった!脳死してた!
「待ってくれええぇぇええええ」
「?」
キョトンと黒髪の少女は首を傾げる。
遠くから見てたから気づかなかった。
少女はこの世のモノとは思えない程美しかった。
紫黒の着物に紅の帯。その美しい着物から見える手は真っ白で今にも溶けて消えてしまいそうな程に透明で透き通っている。手にはそんな天使のような少女の見た目とは相反するように、死神のような黒く血塗られた鎌を持っている。
腰まで伸びた美しい黒髪はどこか吸い込まれてしまいそうな、それでいて宝石のように美しい漆黒だった。
俺を見つめるその目は黄金。かっけぇ。
よく見るとすんげえ美人さん。髪はつやつやだし目は大きい。まつ毛も長いし鼻も高い、、、。スタイルは、、、まぁ胸がないくらいで抜群だ。俺は貧乳も好きだ。ふむふむ。
「見た目麗しいお嬢さん、、、俺を貴方のパーティに一時的に加入させていただけないでしょうか、、?あわよくば出口まで連れて行って貰えたらなと、、、」
「ん、いいよ。私たちもちょうど帰るところ」
俺ってば、神が味方についてるとしか思えん。奇跡も奇跡。だいぶ落ちたし、ここ結構な深層だよな。すげー上位ギルドのパーティでしょこの子。ラッキーだな俺。
「ついてきて」
「おう」
ーーーーーーーー
どうやら俺を拾ってくれたのは
「白菊ちゃん拾ってくれてありがとなー!なんかあったらまた助けてくれ!家に遊びに来てもいーよ!ライボロスのおっさんもまたな!他の奴らも天才だったぜー!」
ダンジョンの下層、35層で出会った不思議な黒髪の男は手をこちらに振りながら走り去っていった。命の恩人たちへの態度とは到底思えない。
「白菊。お前あいつどこで拾ってきたんだ?」
「池眺めてたら上から落ちてきた人?」
パーティメンバーの盾役、ライボロスが訝しげな顔で白菊に話しかける。
「あいつ何もんだ?ほとんど俺たちが倒してるとは言え平気な顔して二十階層後半のモンスター切り倒してやがる」
「確かに見たことない顔だね」
「はぁ。しかも、あいつ多分気づいてないだろ。あれ」
「ん、多分気づいてない。でも私たちにやれることは無い」
「そりゃそうだけどよぉ。また厄介なもんに憑かれちまってんな」
白菊とライボロス。白菊は着物の背中、ライボロスの鎧の肩のぶ分にはグリフォンの紋章が刻まれていた。
「落ちた白龍か、、、、」
ーーーーーー
「あ゛あぁ~、づがれだ」
机の上にドカドカと足を乗せ、タバコを吸うこのやる気のなさそうな男。そういえば自己紹介まだだったな。俺はムラクってんだ。そうだが?昨日宝箱に目がくらんで落とし穴に落ちたマヌケだが?
「部屋の中でタバコ吸うなって言ったですよね?それより、ムラクまた死にかけたですか?馬鹿なんですか?」
「はぁぁぁ」と大仰にため息をつき、両手を腰に当てている白髪ショートのこの少女。
身長は少し低めで乳もない。口から少し覗く犬歯が特徴的。黙ってりゃ有り得んくらい美少女なこの女。名前はマーカラ。
どこで拾ったんだか気づいたら俺の家に居座りやがって。てか好き放題言いやがってこんにゃろう。
「言い過ぎだろ、お前!だいたいなぁ、、!!」
ドンドンと家の扉をノックする音が我が家に響く。マーカラがパタパタと小走りで軽やかに玄関に向かった。
「はいはい、今出ますですよー」
玄関をマカーラが無駄に力強く開ける。ちょ、俺の家壊れるて。
「あ!ローラですね!!!おはようです!タバコ臭いところだけど、どうぞ入ってです!」
悪かったな臭くて。
「お邪魔します、、」
ぺこりとお辞儀して少女が家の中に入ってくる。
少女は茶髪で三つ編みのメガネっ娘。タレ目で泣きぼくろが実にいい!乳はデカい。この子は常に本を胸に抱いて歩いてるな。どうやらうちのマーカラが家に誘ったようだ。
「ムラク~、私ローラとお部屋で遊んでくるですからダンジョン行くならちゃんと戸締りして鍵閉めるですよ~。ささ、ローラはこっちですよ!」
パタンとマーカラの部屋のドアが閉まる。自分の部屋のドアは無駄な力強さ発揮しないのな。
「てか、家にいるなら鍵くらい閉めてくれや、、」
俺はそんなことを呟きながら、とりあえずダンジョンへ行く準備をすることにした。
ーーー
「ムラク、F級冒険者だ。目的は探索」
「OKだ。気をつけていってらっしゃい」
ダンジョンの出入口の門番に冒険者証を見せる。
これがないと門番に止められてダンジョンに入れねーんだよな。まぁ、門番がB級程度の実力だからそれ以上なら平気で無断侵入できるけどな。
俺?F級だが?
さっき言ってただろうがよ。
「さぁてと、今日もお宝探して一攫千金目指しますかー!」
おっさんと少女 独飛 @koshosinaaaaaa
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