第一章:ひとりだけ大きな雛
やわらかな日差しが、巣の上にそっと降りそそぐ朝。
パチッ、パチッ……
と、小さな音が聞こえてきました。
六つの卵の殻が、順番に割れていきます。
ふわふわの黄色い産毛、つぶらな瞳に、ちょこんとしたくちばし。
かわいらしいヒナたちが
「ピヨ、ピヨ」
と鳴きながら、母アヒルのまわりに集まってきました。
やがて──
巣のすみで、残ったひとつの“大きな卵”が、ぐらりと揺れました。
ゴゴゴ……バリバリッ!
殻が大きな音をたてて割れ、最後のヒナが生まれました。
「……で、でかっ!?」
母アヒルは思わず目を見開きました。
そのヒナは、ほかの子たちの倍はある大きさ。
色は灰色がかったくすんだ羽毛で、ふわふわというより、もっさり。
首が長くて、足はがっしりとしていました。
戸惑いながら見つめる母アヒルの足元へ、
その大きなヒナは、よろよろと近づき、
「ピーッ」
と小さな声を上げ、何の疑いもなく、その羽の中にもぐりこみました。
そして、あたたかさに安心したのか、目を閉じてすやすやと眠りはじめます。
母アヒルも、そして他のヒナたちも、しばらく首をかしげて眺めていましたが……
やがて、母アヒルはふっと笑いました。
「ま、見た目なんてどうでもいいさ。
私の巣にいたんだもん。あんたも、大事な私の子だよ」
そうして彼女は、他のヒナたちと同じように、
そのひときわ大きなヒナにも羽をかけました。
──それが、“あの子”の最初の朝でした。
~あとがき:アヒルと白鳥のヒナの違い~
アヒルのヒナは、ふわふわの黄色や茶色っぽい色が多く、丸っこい印象。
白鳥のヒナは、うっすら灰色の産毛で、首も少し長く、スラッとしたフォルム。
こんなふうに、「みにくいアヒルの子」をリアルに見てみると
――ちょっぴりクスッと笑えるお話になっちゃうんです。
次回も、そんな“本当のお話”を添えて、また物語をお届けしますね。
続く~第二章へ~
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