第7話 体育祭開幕
「頑張れー!」
「走れ走れ!」
「負けんな!」
「よっしゃぁっ!」
生徒の歓声と、先生が選んだのであろう軽快な一昔前のJ-POP、更には暑苦しい熱気が校庭を包んでいてなんとも憂鬱な気分である。
気温もまだ初夏だというのに三十度近い。動いていなくても汗で体中ベタベタだ。
これなら一日中古典の授業でもしていた方がマシである。
「――はぁ」
「ねー、もうちょっと楽しそうにしなよ」
「っわ!びっくりした!」
場にそぐわない溜息を聞きつけたのか、木陰で休んでいた友彩を幽霊君がのぞき込んで来た。
さすが幽霊。人を驚かすのが上手である。
「友彩はメガホンとか作ってないの?あ、みんなみたいにほっぺに星とか付けてあげよっか」
「いや、幽霊君は私に触れないから無理でしょ」
「あ、そうだった。へへ」
確かに、思いっきり大声を出して応援したり、可愛い髪形とメイクをして写真をパシャパシャとったり、まさに「青春を謳歌してます!」って感じの生徒たちを見ると、タオルを頭に被って一人それを眺めてる自分が虚しくなってくる。
でも、普段存在感のない奴がイベントの時に限ってイキって来ること以上に冷めるものはない。
だから、邪魔をしないように眺めてるくらいが丁度良いのだ。
「そんなことないと思うけど。楽しみたいって思ってるなら自分から動かなきゃ。笑顔で話しかければ大丈夫だよ」
「そうだったら苦労しないよ⋯それより一人でずっと喋ってたら変な奴になっちゃうでしょ。どっか行って」
「はーい」
――早く終わんないかなぁ。
ただそう思って空を眺めていたら、いつも間にか全種目が終了していた。
私のクラスは第四位。メダルはないけど、まあ、そこそこに良い結果だ。
何人か悔し泣きしてる子がいたけど、その気持ちはちょっとわからない。
――所詮、学校行事じゃん。
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