第3話 ギャルって意外に良い子
「平常心、平常心」
――私は昨日、何も見てない。隣の席になんか誰もいない。そうだ、今日から授業が始まるんだからしっかり勉強しないと。
「あ、おはよー友彩」
「っひ」
昨日のことは知らんぷりして、平静を装って教室に入った瞬間、そこには曇り空が澄んだ青に見えてしまうくらい爽やかな空気を纏ったイケメン君がいた。
昨日の、掌が体を体と認識せずに通り過ぎた感覚が蘇って来て、一気に血の気が引いていく。もともと、低血圧なんだから勘弁してくれ。
とりあえず、一旦教室に入るのは止め、くるりと方向転換しようとしたところ、
「おっはよー。あれ、入んないの?」
登校して来た野々原美咲に声を掛けられてしまい、教室に入らない言い訳が思い浮かばず渋々中に入る。
「そんな睨んだって何もしないよ」
イケメン君――いや、幽霊君から信じられない程に噓くさいセリフを吐かれるが、反応してはいけないと自分に言い聞かせ、出来るだけ窓側に背を向けて席に着く。
「ねえ、野々原さん。私の左隣りって誰もいないよね」
「――?いないよ?昨日から空席じゃん」
「そうだよね。ありがと」
――やっぱり聞かなきゃよかった。
意外にも、授業中に幽霊君は話しかけてきたりしなかった。机の上に教科書も出さず、ただずっと外を眺めていた。
「一緒にご飯食べよー」
「家庭科室行こっ」
「ねーこの問題わかる?」
野々原美咲はギャルっぽいが優しい子で、ことあるごとに話し掛けてきてくれた。一緒にお昼ご飯を食べて、一緒に移動教室へ行って、わからない問題は教え合う。
私は、昔っから人見知りだった。いっつも友達が出来なくて、去年だって多分クラスメイトの半分くらいとしかまともに会話したこともない。
だから、そういう人懐っこい子が近くの席だったのは運が良かった。
それに、彼女と話していると、幽霊君のことを無駄に考えなくて済むからちょっと気が楽。
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