第四十七話 『支店のために遺跡調査を受けたら、帝国と魔王が絡んできた』──俺のギルド、どうしてこうなる。

「これが禁忌の書ですか」

 

 ベッドから上半身をおこし、ミルミナさんが書を手に取ると、静かに表紙を見ている。 おれたちはなんとか帰りついたあと、すぐには燃やさずミルミナさんに一応渡すことにした。


「......ありがとうございます。 これで私の王家としての望みはかないました。 これはお持ちください」

 

「いいんですか?」


「ええ、もはや処分も容易く出きるでしょう。 あなた方がお持ちくださるほうが安全です」


「やった!! みてもいい!」


 ギガルトは答える間もなく、書をもっていって読み漁っている。


「......ワイズ、いままで尽くしてくれてありがとう。 これからは自由に生きてください」


「そうですね。 これからシュンのもとで働こうと思います。 ギガルトがあなたの薬もつくれるかも、といっていますので」


「......私のことはもうよいのです。 私はもはや王女でもなんでもない。 今後はあなたの幸せを望みいきてください」


「私の望みはあなたの幸せです。 これからもおそばにいさせていただきたい」


 そうして二人は見つめあっている。


「さあいくですわ」


「えっ? なんでいいところなのに」 


「だからじゃ! アホなのか貴様!」


 おれは二人に引っ張られ部屋のそとに放り出された。



「いたたっ...... ギガルト、書をかえせ。 さっさと燃やしてしまうぞ」


「ええ!! もったいないよ! もっとこうよ!」


 ギガルトはしぶる。


「ダメですわ。 それを悪いやつにとられたら面倒なことになるですわ」


「それって読めないですよね?」


 セリエスがきく。


「まあ、読めはしないけど...... もったいない、解読したらすごいことなのに」


「ふむ、なるほどな」


 その書を横から覗いたディムリアがうなづいている。


「お前わかるのか!」


「我を誰とおもっておる?」


「アホ魔王」


「だらけ魔王ですわ」


「かわいい魔王」


「実験体」


「セリエス以外魔法で消し去ってやろうか!!」


「それでなんてかいてある?」


「ふむ、どうやら魔力に人格を与え、生命となす方法についてかかれておるな」


「魔力に人格!?」

 

「それって......」


「ああ、高位モンスターや我のような存在じゃろう......」


「......さっさと焼き払おう」


 おれたちは書を焼き払った。


 それから数日たち、ワイズたちはおれたちのもとにきた。


「これからよろしく頼む」


「ああ」


(ふひひ、これで楽できるぞ!)


 そう考えていたおれだったが、そううまくはいかなかった。



「えっ!? 遺跡が発掘された」


 ラーク卿から呼び出され、屋敷へと赴くとそうきかされた。


「ああそうなんだ。 我々の共邦である隣国バルツアで発見された。 そこは帝国との国境近くなんだが、そこからモンスターがあらわれているらしい」


「それって帝国絡みってことですか?」


「その遺跡に集団ではいるものを見たそうだ。 しかしモンスターの出現と帝国への防衛がありできずにいる。 そこで君たちのことをしったらしい」


「つまり我がギルドに遺跡を調査せよと」


「頼めるかな」


(正直、帝国絡みだとグアレナがいるかも、やつはディムリアを狙っている。 なにか嫌な予感がするな)


「バルツアはこの件次第で、自国にギルドの支店を許可するといってきている」


「えっ!? 支店を」


(ふーむ、ワイズがきてから働きたいというものがかなり増えている...... ここはチャンスか。 まあディムリアはおいていけばいいか)


「わかりました。 調査だけならばお受けします」



「われもいく!!」   


 ディムリアがついてくると騒いでいる。


「ダメだ。 帝国絡みの可能性が高い。 狙われているお前を奪われると間違いなく面倒なことになる」


「我は平気だ。 魔法だってある!」


(こいついつもめんどくさがるくせに今回はなんでだ? あの禁忌の書のせいか)


「ワイズのそばなら安心だ。 ワイズ頼むよ」


「ああ、任せておけ」


 ディムリアは不満顔で頬をふくらませこちらを見ている。


「シュン」


 奥からギガルトが近づいてきた。


「なんだ?」


「こいつだ」


 その手にはヤーツ砂漠の研究所でてにいれた魔力の結晶がある。


「ああ、わかったか」


「やはり魔鉱宝石オリハルコンジェムだよ。 とはいえ完成形ではなくて、未完成のものみたいだよ。 含まれる魔力もそこまで多くもない」


「なるほど...... そうか、他にわかったことは?」


「キメラが残したものも更に精度の低いものだけど、同じものだね」


「つまり、帝国がはるか昔の技術を模倣したものということか」


「多分ね」


「なあシュン」


 パニエが話しかけてきた。


「その鉱石、私にくれないか?」


「なぜだ?」


「その魔鉱宝石オリハルコンジェムから武具をつくってみたいんだ。 ギガルトの知識を使えば加工できるらしい。 メイシァルも手伝ってくれるっていってる」


魔鉱宝石オリハルコンジェムの武具...... 魔王と戦えるセリエスの剣みたいなものか。 わかった頼む」


「おお!! ありがとう!!」

 

 おれはバルツアへと向かった。

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