第四十三話 『帝都潜入、そして研究所の地下へ』 ──動き出す影と、眠る禁書。
「意外にあっさりだったな」
検問を容易く突破でき拍子抜けした。
「俺以外は子供だからな。 そしてその証明書もかなり高額なものだ。 庶民では手が出ないものだからな。 まあ、お前とディムリアがケンカしたから面倒だと思われたのもある」
「こいつが兵士と揉めたからだ」
「あやつがからかってしりをさわったのじゃ!」
「状況が状況なんだ、汚いしりぐらいいいだろ」
「誰が汚いしりじゃ!! 我の魔法で魂ごと消滅させてやろうか!!!」
「まあまあ、お二方」
「大声をだすと怪しまれるですわ!」
ミリアがとめる。
「逆に潜入するやつがこんなドタバタしないって」
そうギガルトが鼻唄を歌っている。
「お前たちは自由だな」
あきれたようにワイズがいう。
馬車から見える王都を歩くものはみなうつむき加減で陰鬱な空気がただよう。
「それにしても、みんななんか暗いな」
「......重税で生活も苦しい。 しかも声をあげ逆らえば投獄だ。 みんな静かに受け入れてる。 たまに脱出を試みるものもいるが捕まれば重罪、死刑もある」
ワイズは憐れみの目を住民に向けている。
「そういやワイズは騎士だったな。 貴族か、自由なんてないだろうな」
「まあな。 下級貴族だがな」
「それで騎士団長とはすごいですね」
セリエスが驚いた。
「ああ、本来なら下級貴族の俺はなることはできなかったが、王様は懐の深い方でな。 実力で選んでくれた。 おかげでやっかみもおおかったが、ミルミナさまの護衛をできるようになった」
「ふむ、ワイズはミルミナの事が好きなのじゃな」
「おい、おれたちが気を遣ってるのに、直球できくなよ!」
「はははっ、かまわん。 確かにそうだな。 昔から彼女は体が弱くてなにもできないとおもって王族であることに引け目を感じていてな。 より王族らしくいきようと幼い頃から自らを縛っていた。 とてもおかわいそうでな」
「それで解放するためにあなたはきたのですわ?」
「それもあるな。 ミルミナさまもおれ自身も身分に縛られているのかもしれん」
そうワイズは目を伏せた。
「まあ、でもミルミナさんもワイズも国がなくなったんだから、これが終われば勝手にいきられるだろ」
「......そうだな。 そうなることを祈るよ」
「あそこが研究所か」
王都の東側にある区画にきたおれたちは、遠くに無機質な巨大な白い建物が見える場所にきた。 その白い建物は厳重な警備がしかれていて近づけない。
「かなり厳重だな」
「それでどうはいるんじゃ」
「ああ、潜入するには夜までまってからだ」
おれたちはワイズの用意した店にはいる。 そこにはモンスターの角や牙、革などがおかれている。
「ここは、モンスターの部位を売る店か」
「ああ、かなり強いモンスターの卸問屋だ。 モンスターを研究している研究所の奴らもお得意様なのさ」
「なるほどね。 確かに錬金術には魔力をふくむモンスターの部位は素材としても研究用としても必要だ。 考えたね。 おっ、これなんかとても希少だよ」
ギガルトはそれを興味ぶかくみながらいう。
「そうだ。 かなり希少なものを扱う。 そしてそれを研究所に搬入するのが夜なのさ。 かなりの信頼をえている」
「でもワイズさんは騎士団長なんですよね。 顔はしられてないのですか?」
セリエスがいうと、ワイズはうなづく。
「奴らと戦ったわけじゃないしな。 滅んだ国のことなど忘れているだろう。 奴らには戦争したことにすらなっていないんだからな」
「とりかえされるとはおもっていないってわけですわ」
「ああ、奴らの動向はモンスターが放たれる前から調べてはいたが、まさかあんなものを送り込んでくるとはおもわなかった。 対応が遅れた」
そう悔しそうにワイズは眉をひそめた。
「ただ送られたらそれで終わりだからな。 しかし、あんなでかいのどうやって移動させたんだ。 コントロールも無理なんだろ」
「ああ、もともと我が国にいたモンスターを錬金術を使い加工したらしい...... 向こうも工作や諜報活動はしていたようだが、情けないことに把握しきれなかった」
「まあ国力がちがうからな。 仕方ない」
「ああ決行は明後日だ。 それまでに準備を終わらせる。 ディムリアには頼むぞ」
「わかった」
それから決行の日。
「ふむ、納品は確認した、通れ」
警備をとおり馬車がすすむ。 おれたちは多くある納品の箱の中に隠れてはいる。
どうやら研究所の建物地下へと馬車はおりていった。
「ここにおいてくれ」
そういっている声がする。
「いいぞ......」
しばらくしてワイズの声がした。 外にでるとすこし暗い石造りの倉庫のよなところだった。
「ふぅ、なんとかばれずに入れたか」
「ああ、この建物の図面はつくってある。 禁忌の書があるのはおそらく最下層だ。 ただ警備がいないとも限らん。 ここからは戦闘が必要ななるかもしれん」
「いや、それは必要ない。 ディムリア頼む」
「わかっておる」
ディムリアがその姿を消した。
「ミリアもついていってくれ。 この暗さなら見つからないだろう」
「わかったですわ」
二人は先行して偵察にいった。
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