第四十二話 『帝国潜入開始! 禁忌の書はモンスターでした』──討伐しなきゃ破棄できないって聞いてない!

「ぶぁっかじゃないですわ!」


 帰ってからミリアにこっぴどく怒られている。


(これで15回目だ。 アホが17、お調子ものが10、ポンコツ20か...... 今回は嵐がすぎ去るのがおそいな。 これまでのことでかなり怒りがたまっているなミリアさん)


「まあ、まあ、ミリアさん。 これは世界を救うことにも繋がるのですから」


 そうセリエスがかばってくれる。

 

「そうだぞ。 お前が英雄になれっていったんじゃないか。それに蒸気をだせたり回復魔法を覚えたんだよな?」


「......そうですわ。 大変だったですわ。 でもおおかた、元王女がきれいだかで格好つけて引けなくなったんですわ。 毎回死にかけてるのに懲りないですわ」

 

(す、鋭い......) 


「とはいえ、その技術が帝国とやらにわたれば危険なのはたしか。 解読される前に奪い取るのがよい」


「ディムリアまで...... はぁ、わかりましたですわ」


 なんとかミリアを説得して、ディムリアとともに帝国に行くことになった。



 ワイズの部下数人とおれたちは二台の馬車に乗り三日かけプレマスついた。 プレマスは瓦礫がそこらにある荒れたところだった。


「ここは砂漠とはちがうな」


「ああ、国の南が砂漠で、ここは北だからな。 俺たちはここから地下トンネルをほり、内部に人を送っていた。 滅んだ国からほってるとは思わんだろう」


 そうワイズがいう。 


「あそこが、城のあった場所だ」


 確かに崩れかけた城がある。 


「ここまで壊されるなんて、一体何体におそわれたのじゃ?」


「一体だ」


「一体ですわ!?」


「ああ、おれたちは国民を逃がすぐらいしかできなかった......」 


「そんなに強いのか?」


「ほら、あそこをみろ」 


 ワイズの部下が指を指す。 そこに丘がみえたとおもったら、それは巨大な頭が三つある犬のようだった。


「あれかよ!」


「大きすぎます!」


「あんなのを帝国がつくったのか!」


 ギガルトが興奮気味にきいた。


「そうだ。 だが奴らもコントローラできてはいないようでな。 そのまま放置したようだ」


「さすがにあれを倒すのは無理そうじゃな」


「ですね。 山をきるようなものです」

 

「魔法もほとんど効果無さそうですわ」


 セリエスとミリアもうなづく。

 

「これ以上近づくと薬で匂いは消しているがばれる。 早くこっちにこい」


 城の中に地下への階段がありそこをおりると、水路になっていた。


「水路か」


「ああ、もともとあったここの奥を掘り進め、帝国まで繋げた。 なんとか禁忌の書を奪取するためにな」


「そこまでしなくてもいいんじゃないか。 おまえらの国が解読に数百年かかってんだ。 すぐ解読はされないだろう」


「まあそうだが、それが王女...... ミルミナさまの唯一の心残りだからな。 あの方は幼い頃より体が弱い。 だからこそ自らくるのは諦められた」


「責任か」


「ああ、自分たちの誤った判断で世界に危機が及ぶのを危惧しておられる」


「面倒だな。 おれならほっとくけどな」


「あなたはそういう人間ですわ。 世の中には責任に縛られるものがおおいのですわ」


「どっちを選んでも自分のエゴだろ。 どっちが気持ちが楽かって話だ」


「はははっ、お前のようならミルミナさまも傷つかずに自らの幸せを求められただろう」


 そうワイズは笑い、ミリアはため息をついている。


「どうやら行き止まりです」


 水路の奥洞窟を抜けるとそこに上に出る扉があった。



「ここが帝国か」


 地上にあがると森のなかにでた。


「ああ、ラトマの森という場所だ。 ここから帝都までいく。 潜伏しているものたちがすべて用意をしてくれている」 


 森を抜けるとそこには馬車があり、ワイズと部下が商人風の服に着替え帝都へとむかった。


「簡単に潜入できたですわ」


「帝国は警備が手薄なのですか? 国境にはかなり高い壁がありますよね」


「ああ、入国には厳正な審査があるが、なかは広大な領土なため手薄ではある。 ただ帝都には証明書をもつ特別な人間しか入れんがな」


「それはもってるのか?」


「ああ、六枚な。 おれとお前たち五人とミリアではいる。 うちのやつらより強いし警戒されづらいだろう」


「だから子供のぼくたちなんですね.」 


「そうだ。 そして研究所にはいり禁忌の書を破棄する」


「それならおれたちがいかなくてもいいんじゃないのか?」


「じゃの、その場で破棄すればよかろう」


「それだ...... 実はプレマスが禁忌の書を破棄できなかったのはもうひとつ理由があるからだ。 その書は魔法がかかっていて、モンスターのような姿なんだ。 かなり強い」


「なるほど、我の黄金竜のような書をまもらせる魔法か」


「あれか...... それでおれたちに頼みにきたのか」

 

「ああ、大人数の大人だと警戒されるし、何よりその書を倒すには指定災害モンスター討伐クラスの強さがいる。 倒さないと破棄すらできん」


「だから解読も難しいのですね」


「そうだ。 ただ帝国ならいつか倒し手に入れてしまう。 実際ケルベロスがその書を弱らせてつれていったというからな」


「なるほど、あれなら可能だろうな」


「さあつくぞ」


 馬車は壁に囲まれた都市への門にはいっていった。

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