第三十六話 『封じられしものと滅びた王国』──リアベールの記憶が導く先は、災厄の地。

 王都にやってきたおれたちはラーク卿に事情をはなした。


「......七つに別れた魔王が復活している可能性がある。 ふむ、そこで見つかったセリエスどののその剣の紋章は確かにリアベールの家の...... それにシュンどの、あなたがいうのだから本当でしょうな」


「一体は、いや二体は私たちが倒しましたが......」


「我は倒されてないぞ」


 ディムリアはだされた菓子を両手でくいながら否定した。


「お前は黙ってろ。 一体はリアベール家のものが倒しています」


「それで三体、残りは四体ですか...... それでどの程度の強さでしたか」


「一体はポンコツで無視しても構いませんが」


「誰がポンコツじゃ!」


「二体目は恐ろしく強く。 このディムリアの最大魔法でも、すぐ再生し、セリエスの剣でも傷をあたえる程度、倒されていたもう一体もリアベール家のものとほぼ互角だったかとおもいます」


「それほどの強さか...... 厄介だな。 王にはそう伝えますが、シュンどのはどうされるおつもりですか」


「もちろん、人々の安全の為に倒したいのですが......」


(いや、仕事に関係ないならほっときたいけど...... 冒険者ギルドを運営すると必ずあたるはずだから、国になんとかしてもらわないとな)


「いかんせん、情報がすくなく。 今回は図書館でリアベール関係の本を調べようかと......」


「それでわざわざ王都まで......」


 感激したようにラーク卿は声のトーンをあげた。


「わかりました! 王にはそのように伝えます! 我々もなにかがわかり次第、情報をお渡ししますので!」


「はい、こちらも調べた情報をお伝えします」


 そういってラーク卿の屋敷をでた。



「貴様もやっとやる気になったか」


「さすがシュンさん! ぼくは感激しています!」


「なにいってる。 ああでもいわないと協力してくんないだろ。 おれが気になってんのは、冒険者ギルドにあの魔王が関わったとき、存続が危ぶまれるからだ。 なんとか国をかつぎだして対応してもらう」


「やはりそなたはそなただな......」


「いえ、ディムリアさん! 照れ隠しですよ! ぼくにはわかってます!」


 セリエスがキラキラとした目でこちらをみている。


(いや、わかってないよ。 なんとか国にしてもらうために、情報をえないとな)

 


「ここが図書館か......」


 目の前に巨大な建物があり、膨大な書物が棚にある。


「この中からどうやって探すのじゃ。 我はいやじゃぞ!」


「司書の人にきいてみましょう」


 おれたちはカウンターに向かい、司書の女性にリアベールと魔王に関する書籍のことをきいた。


「リアベールのことを書いている本はすくないですね。 何せいままで暗黒騎士としてタブー視されていましたから...... 魔王の本についてもそれほどの数はありません。 謎が多いんです」


 そういわれて建物の一角へと連れていってもらう。 そこには古い書物が棚に並べられている。


「ここにあるのが、全てですね」


「わかりました」


 司書に礼をいってしらべはじめた。



「うーん、なんか漠然とした話だけだったな」


 おれたちはなにも収穫がなく、城に戻っていた。


「ええ、怖い魔王がいたとか、古代人の神たとか、人を支配しようとしたとか、そんなおとぎ話ばかりです」


「つまらん。 なあいいことを思い付いた! 菓子を食べに行こう!」


 すぐ飽きたらしいディムリアが本をかぶりいった。


「......どこがいいことだ。 お前しこたまラーク卿のところで食ってただろうが。 ディムリアなんか覚えてることないのか」


「覚えてること......」


「例えばなぜ人間を支配しようとしたとかだ」


「ふむ、よくはわからん。 ただひたすらなにかをしなければならんという使命感だったな。 とはいえよくは覚えておらん......」


(しなければならない...... 命令でもされていたのか? そもそも魔力の宝石が核なのは何でなんだ?)


「シュンさん! これ」


 そうセリエスが本をもちこちらに見せた。


「......なに、なに、これはリアベールの本か。 リアベールはかつてバスブット王国にいた、これがどうかしたのか?」


「ええ、思い出したんです! リアベール家は暗黒騎士という汚名を着せられるまえ、バスブット王国の騎士でした。 その国は滅びましたが、その場所にリアベールが封じたものがあると祖父から聞いたことがあります」


「封じたもの? なにかわかるか」


「いえ、ただ再びそれが必要になるときがくる、そういっていました」


「ふむ、なんじゃろう?」


「わからんがいまは情報がない。 そこまでいってみるか」


「ただ、そのバスブット王国のある場所は...... 指定災害モンスターがいるのです」


「まじか! うーん、どうしようか」


「やめて城で食っちゃねしようぞ」


「もうお前は隠しもしないな...... ただ、そうだな。 さすがに指定災害モンスターはあの魔王と同じぐらい面倒だ」


「バスブット王国の指定災害モンスターはかなり有名なモンスターよ。 倒すと知名度が増すかもしれないわ」


 そうシェリガがいう。


「知名度...... 確かに冒険者が足りてない。 取りあえずラーク卿に話をしてくるか」


 おれたちは再びラーク卿の屋敷へと赴いた。

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