第三十四話 『七つの魔王?知らんがな!でも遺跡へは行く』──金とロマンと爆発の香り。

 木造の小屋に近づき、ノックする。


「ギガルトさん、すこしお尋ねしたいことが......」


 その瞬間、目の前の扉が爆発した。


「うおっ!!」


「ぬっ!」 


「きゃああ!!」


 紫の煙があがる。


「お前らおれを盾にしたな! 死ぬかと思ったぞ!」 


「しかたなかろう。 そこにおまえがおったのじゃ」


「そんなことより、なんですわ今の爆発!?」


「そんなことよりって......」


 目の前の煙がはれると、そこに倒れている白衣のものがいる。


「おい! ディムリア!」


「うむ!」



「イヤー すまなかった。 つい実験していてね。 爆発するとは思ったんだけど、1%爆発しない方にかけたら、ああなったんだ」


 白衣でメガネの少女がそこにいた。


「あなたがギガルトさん......」


「ああ、そうだよ。 私がギガルトだ。 それでなんのようかな」


 おれは事情を話して宝石をみせた。


「な、なんだと!? 古代の研究所に魔王!? そして魔力の結晶!!!」


「なんだ!? やめろ!!!」


「はぁはぁ、これが魔王......」


 手をわきわきしながらギガルトはディムリアにちかづく。


「こわい、こわい! こいつなんかこわい!!」


「それでなんかわかるの?」


「わからない!」


「なんだよ! それ!」


「まあ、この子のことを解体すればわかるかも!」  


 そういってギガルトは器具を取り出す。


「ふざけるな!!」


「そうか、じゃあ頼む」


「頼むな! バカか貴様! ミリア助けてくれ! こいつら頭がおかしいのじゃ!」


「落ち着くですわ。 この魔力の結晶はなんなんですわ?」


 魔力の宝石をミリアはかかえてみせた。


「わからないけど、古代には魔力を結晶化する技術があったみたいね。 それでその研究所は!」


「中のものはほとんど壊れてたぞ。 それぐらいしかなかった」


「そうなの......」


 ギガルトは目に見えて肩を落とし落ち込んだ。


「そもそも魔力ってなんなんだよ?」


「この世界に循環するエネルギーだね」


「エネルギー...... それを古代には結晶化できてたってことか?」


「そうだね。 魔法もそのエネルギーを変換したものだよ」


(なるほど、ディムリアも黒いのも、あの宝石をもってるから強い魔法を放てるのか......)


「あの黒い魔王は他にもいるのか?」


「わからないが...... ただ昔の文献から、魔王ディムリアは倒され封印されたという...... しかも七つに」


「七つ!? じゃああと五体もいるのか! こんなのが!」


「誰がこんなのだ!」


「それはダンジョンにいるのか?」


「多分...... フレドの森、ヤーツ砂漠、文献にあった場所。 この近くにも文献にあった古代の遺跡はある。 私もその古代遺跡に興味があってここにきたの。 ただモンスターがいるからはいれない。 一緒に行ってくれない?」


 簡単にギガルトがいう。


「いやだ! あんなやつともう戦えるか!」


「だけどまだ誰も入ったことないから、宝物があるかも......」


 そうギガルトがメガネを直しつついった。


「話を聞こうか......」


「バカなんですわ! それで毎回ひどい目にあってるのに、まだ懲りないんですわ!」


「まあ、いまさらよな。 あきらめよミリア」


 ディムリアはため息をつきながらそういった。



「ここか、確かに遺跡だな。 苔がひどいな」


 そこは森のおく緑の苔で包まれている石造りの遺跡だった。


「ええ、私が見つけたから、誰も入ってないよ」


「そもそも、ギガルトはなぜ錬金術師をしてるですわ」


「このバカのように金でもほっしたか?」


「ちがうよ。 私は技術に興味があるんだ。 古代にははすごい技術があったけど、それはもうないからね。 調べたいんだ」


「ふーん、めんどそうだな」


「あなたって人は...... ですわ」


「お前には永遠にわからんロマンというやつじゃ」


 おれたちは遺跡へとむかう。 何体かのモンスターとかちあうが腕を増やして倒した。


「でもここは前のダンジョンとなちがうな」


「そうですわ?」


「ああ、濃い魔力もないしそこまでのモンスターもいなかった...... ここにあのものがいるとは思えぬな」


「まあ、全てのダンジョンにあるわけないからね。 とりあえず調べよう」


 おれたちはダンジョン内を探索するが、とくにめぼしいものはない。 


「なんもないな......」


「まあ、いつもことですわ。 これに懲りたらすぐお金のことに飛び付くのはやめるですわ」


「そうじゃな。 ん? 魔力を感じる......」


「本当ですわ...... かすかに」


「本当か! どこだ。 なにもないぞ」


「ここ、他のかべとちがうね」


 そうギガルトが壁を叩く。


「よし、ぶちぬこう」


「結構厚い壁だよ。 私の作った魔力爆弾で吹き飛ばそうか」


「いらん! それドアを爆発させたやつじゃないのか!」


「なら、我がやるか。 五発ぐらいなら魔法は使えるぞ」


「ディムリアもミリアも魔法は温存しといてくれ、ここはおれがやる」


 鞄から黒い剣をとりだす。


「その剣、そんなものもってたんですわ?」

 

「ああ、パニエにつくってもらった。 サソリの体から作った重い剣だ。 普通のだと固いやつと戦えないからな」


「重すぎる...... こんなものをふるうつもり?」


 そうギガルトが剣をもちいった。 おれは腕を増やすとそれを持ち上げる。


「そりゃ!」


 ドガッ


 壁は砕けた。


「おお! やるね!」


「よし、先に進むぞ!」


 おれたちは先へと進んだ。

 


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