第20話「大臣との対決」

 ーー獣王との謁見の場所は帝国の広場であった。


 噴水があり、帝国民達も見守る中で、国王とカエリア大臣が獣王となったディンと謁見した。


「ディン殿でしたか、まさか獣王が現れるとは思いませんでした。我々はアナタと戦うつもりはありません。アナタとは和平を結びに来ました」


 国王は深々と頭を下げる中でディンは黙っていた。


 今回の作戦として、ディンは無言の王を演じるように言われた。


 何故なら、ディンに交渉術なんてないからだ。


「ほっほっほ、さすがは獣王ですな。この場でアナタ様に勝てる存在などいるまい。その無言も王としての圧力ですかな?」


 カエリア大臣は滅多に人前に出ない事で有名だが、まさか見た目が少女だったのは誰も思わなかった。


 道化師のような格好をした華奢きゃしゃな少女。


 見た目は16歳に見えるが、大臣は何十年も生きてる事を帝国民全員が知ってる事だ。


 なのに見た目が少女とは、どう言う事だろうか?


 みんなが答えを得られないまま国王はディンに握手を求めた。


「さぁ、握手を……あの、ディン殿、間違っても私の手を握り潰さないでくださいね?」


「……」


 ディンが握手をしようとした時だった、広場が昼間なのに暗くなった気がしたので空を見上げると、そこには巨大なリヴァイアサンが空を飛んでいた。


『がぁああああ!!』


「リヴァイアサン!? なぜここに! 衛兵! 民を守るのだ!」


 国王が兵士に指示を出す中で、全ての注目がリヴァイアサンに向いていると、カエリア大臣の背中に剣を突きつけられた。


「はぁ、折れた聖剣ですか。刀身がないのに剣として使えるのは私も予想外でしたな」


 カエリア大臣の背後に立っていたのはレミアで、大臣の目の前には仮面を外したサラとリミカが立っていた。


「これはこれはサラリス様。わざわざ城を抜けて怪盗ごっこを楽しんでたのですかな?」


「カエリア……じゃないよね? 今のアナタは強欲のネックレスに宿る悪魔そのもの。本物のカエリアを返してもらうよ!」


「ふーん、なんだバレてるのか。と言われても、強欲のネックレスを求めたのはカエリアの方だぞ? 私は強欲のネックレスと言う窮屈きゅうくつなアイテムの中から解放されたかっただけなのに」


「言い訳はいいわ。リミカ! 早くコードブレイクを!」


 リミカがコードブレイクを発動しようとした瞬間だった。


 カエリアは手で印を結ぶと信じられない技を発動した。


「コードブレイク『オメガ』」


「は? ちょっと待てよ、なんでお前もコードブレイクが使える? しかも、オメガってなんだ!」


 次の瞬間、その場に居た者達全員が闇に包まれた。


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