第18話「大臣の余裕」

「はぁ、獣王が現れた? アレってマカロン家が守ってた王冠だよね? しかも何かな、帝国で人気のクラウンバレットの一員であるディンが獣王だと認められたと?」


 兵士は大臣に対して真実を語ったが、当の大臣は興味関心もなくケーキを食べていた。


「あ、あの大臣? 獣王が現れたのに余裕ですね。しかも帝国第一王女サラリス様がお亡くなりになった時も慌ててませんでしたが……」


「んー? 私があの小娘の策が見破れないと思ってたのか? 嫌でも私は獣王と謁見えっけんしなくてはならない。その間に他の三家の貴族の中にクラウンバレットの一味が紛れ込んでるんだろ? んで四方八方から私の逃げ道を塞いで強欲のネックレスでも奪うんだろ? バレバレなんだよねー」


「そ、それがサラリス様の策だと? つまりサラリス様はまだ生きてる?」


「まぁ、お姫様としてのサラリス王女が死亡した事実は変わらないだろうねー。馬鹿な娘だ、髪を切り落とした程度で自由の身になったと勘違いしてるからな」


「つまり、サラリス様は現れる?」


「ん、だろうね。どうせクラウンバレットの中に居るんだろ? なら問題はリミカのコードブレイクか。アレを強欲のネックレスに使われたら終わりだ。連中が強欲のネックレスを破壊するつもりならな」


 かなり不利な状況のはずなのに、大臣は慌てる様子もなく、黙々とケーキを食べていた。


 その様子に違和感を感じていた兵士だったが、やがて別の兵士が大臣の部屋に入ってきた。


「報告です! 帝国側は獣王と謁見する準備を進めてます! カエリア大臣にも同席するように陛下から命令が下りました!」


「分かったよー、陛下直々の頼みなら仕方ないねー」


 そう言ってカエリア大臣は首に強欲のネックレスを下げながら自室を出た後に、部屋に残された兵士二人はお互いの疑問を共有した。


「どう思う? あのカエリア大臣の態度」


「余裕がありすぎる。四つの貴族を象徴する財宝が無くなって貴族の権威が失墜したにも関わらず、しかも獣王まで現れたのに、何を企んでるんだ?」


「さぁな、俺達みたいな雑兵ぞうひょうには大臣の考えなんて分からないさ……てか、サラリス王女が現れたら、お前どうする?」


「どうするも何も、王女の資格が無くなったのだろ? サラリス王女には恩があるが、残念だが賊として捕まえるしかない」


「はぁ、俺達は時の運に任せるしかないのか」

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