全知全能美少女神が俺だけに尽くしてくれるけど耳かき以外してほしいことがない
うざいあず
第1話 全知全能美少女神、降臨
我が愛しのワンルームに帰宅できたのはちょうど午前二時であった。
実家から持ってきた壁掛け時計がそう告げている。
「あー死ぬ。マジで死ぬ。もうやめたい」
靴を脱いで、靴下を脱いで、ネクタイを外して、でもスーツを脱ぐのはだるくて、すぐさまベッドにダイブ。
「飯……そうだ飯、買ったのに……」
視界の端。ローテーブルに山積みにされた空のプラスチック容器のそばには、まだ温かい温玉付き牛丼並盛の入ったレジ袋を乱暴に置いてあった。
お腹は空いている。あってないような昼休憩から何も食べてないのだから……えっと、何時間食ってないんだ? そんなことも考えられないくらい眠かった。
ベッドの心地よさに負けて、伸ばした腕は途中でだらんと垂れ下げてしまう。
まあいいか。
明日の朝ごはんってことにしよう。
えっと、明日は五時起き……アラーム、アラーム……。
瞼が重い。思考がぼやけている。スマホってどこにあるっけ。遅刻は絶対したくないのに。
薄れゆく意識の中で視界に入ったのは、新卒の初任給で買った美少女フィギュアであった。
赤と白を基調とした和装のおっぱいの大きな神様のキャラ。
当時大好きだったゲームの大好きだったキャラクター。受注生産で、万単位のフィギュアなんて買ったことなかったから、届いたときにはすっごい嬉しかったっけ。
でも、もう何年もそのゲーム遊べてないなあ。
他にも遊べてないゲームいっぱいあるなあ。
読めてない漫画とかラノベとか、見たいアニメや映画も沢山あったのに、大学生の頃はバンバン稼いでバンバン趣味に没頭してやる!って息巻いていたのに。
「せめて、時間があったらなあ」
「しゃーない。時間をくれてやろう」
俺の意識はそこで途絶えた。
夢を見ていた。
大好きな和装おっぱい神様に耳かきをされる夢だった。
さびれた神社の軒先で膝枕されて、視界のほとんどがおっぱいで見えないまま、梵天でこしょこしょされたり、麺棒で柔らかく汚れを取ってもらったり、耳に息を吹きかけてもらったり、すごくいい夢。
「こんなもんでええじゃろ。ほれ、おきんかいっ!」
文句ないロリババアボイスが脳内に響き、自然と目が覚めて、むくりと身体を起こした。
視界いっぱいに広がる、いつもと変わらぬワンルーム。
ローテーブルの上には放置しているカップ麺やお弁当のプラスチック容器の数々。
買うだけ買って開けることさえしてない、恐らくゲームパッケージの入った段ボール群。
うん、夢は夢だ。
ここは俺の部屋で、俺は独身で、そして俺は社畜。
いやあ、アラームなしで起きられるなんて運がいいなあ。
ベッドからゴミだらけの床に立ち軽く伸びをする。まだ覚醒しきらない意識の中、今日という一日を乗り越えるべく、冷蔵庫に常備してあるエナジードリンクで身体に喝を入れようと、
「二時?」
壁掛け時計は二時過ぎを指していた。
待てよ。待てよ、待てよ、待てよ?
俺が帰ってきたのが二時で、そこから十分そこらしか経ってないってことか?
いやそれはない。メンタルもフィジカルも完全回復、眠気だってほぼゼロだっていうのに――「午後…………二時…………?」
「寝過ごしたぁっ!?!?」
やっちまった。終わった。絶対それだけはしないよう気を付けていたのに。これ何時間の遅刻だよ、始業は一応八時だけど、始発に乗んないと怒られるし、ああブラック企業のせいで被害がどのくらいか分からん!
ともかく電話だ。全力謝罪だ。
「スマホスマホ……え、どこやったっけ!?」
「ほれ。ここじゃぞ」
「あ、どうも。あとパジャマからスーツに着替えないと! クローゼットか!? 脱ぎ散らしたんだっけ!?」
いや、違う。
違うぞ。
俺の記憶じゃあスーツのまま寝たはずだ。こんなパジャマに着替える余裕なんかなくて……てかなにこのパジャマ!? 俺の持ってるやつじゃない! 白赤チェックの長袖セットアップなんか持ってない!
いやいや、いや。
それ以前に、俺、誰からスマホ渡された……?
「貴君がなぜいそいでいるのかは皆目見当つかぬが、それがもし会社何某、ぶらっく企業勤めのせいだとするならば、安心召されよ」
錆びたボルトを緩めるかのように俺は声の方向へ、ゆっくりと顔を向けた。
社会人生活がつらくて、とうとう精神に異常をきたしたのかと思った。
だって、この声がこの汚部屋から聞こえるのはありえないのだ。
そのキャラクターが現実に存在するのはありえない。
あるはずがない。
日焼け知らずの透明感のあるもっちり肌がかなり晒された、肌面積の大きな赤と白を基調とした和装に身を包み、小柄な体躯に不釣り合いなくらい大きなおっぱいをたずさえた美少女。
ウェーブがかった赤髪のインナーカラーとメッシュは白く、瞳はこれまた赤と白のオッドアイ、ピアスやイヤーカフ、細部の装飾に至るまで、それは僕の知る彼女だった。
何度目をこすっても、頬をはたいても、消えてはくれなかった。
俺の大好きなゲームのキャラクター『アマテラス』がそこにはおわした。
「時間は既に止めておる。遅刻の心配はない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます