星空

第9話

「ほんと上手に撮るわね」


翔子は感心したように言う。

私達は月見里くんが昨日撮った以外の写真も見せてもらったんだけど、どれもほんとにすごくて翔子が褒めるのも分かる。


「それにしても沢山撮ってるよね。いつぐらいから撮ってるの?」


私はパソコンの画面を見ながら聞いてみた。


「いつからだろ?多分4〜5年前くらいかな」


彼は指を折りながら年数を教えている。

今度はあごに手を当てないんだ!なんて質問とは別の事を考えてしまった。


「ちょっと休憩にしたら?」


そう言いながら美咲さんがアイスコーヒーを机の上に置いてくれる。雰囲気の良い喫茶店でアイスコーヒーを出されると何だか大人になった気分になってくる。


「ありがとうございます」

「遠慮なく飲んでね」


美咲さんはそう言うと月見里くんの隣に腰を下ろした。その時に彼がちょっと嫌そうな顔をしたのが新鮮でつい笑ってしまった。彼は見られた事に気付いたのか目を逸らしながら


「それ砂糖もミルクも入れないで飲めるから」


ちょっとぶっきらぼうに教えてくれた。

さては恥ずかしかったんだな。

彼に言われた通り何も入れずに飲んでみる。


「美味しい」

「ほんと!ちょっと甘くて美味しい」


私も翔子もすぐにこのアイスコーヒーの虜になってしまったのだ。美咲さんは嬉しそうに


「気にって貰えてよかった。好きなだけ飲んでいってね」


そう言って自分のコーヒーを飲んでいる。

私たちは一旦写真を見るのをやめて休憩する事にした。その間、翔子は美咲さんにコーヒーの事を色々聞いている。私はアイスコーヒーを飲みながらパソコンに映されている写真を眺めているとふと先ほどの会話を思い出した。


「やっぱり5年も撮ってるから、こんなすごい写真になるのかな」

「その位なら、ちゃんとしたカメラがあればすぐに撮れる様になるぞ」


彼がなんて事ないように言う。あまりにあっさりと言うので、私は思っていた事をそのまま口に出した。


「私でも撮れるかな?」


それは写真を見ている時に私が思った事だった。こんな素敵な写真を私も撮ってみたい。


「写真撮るのに興味あるのか?」


彼は少し驚いた様な顔をして聞いてくる。

私は彼の問いに素直に答えていた。


「写真見てたら興味が湧いてきたんだ。

私もこんな素敵な写真撮ってみたいなって」


なんでだろう?彼を見ていると素直に思った事を話せてしまう。たぶんあの日、抱えていた気持ちを彼に聞いてもらったからかもしれない。


「どんな写真撮ってみたい?」

「桜のやつとか星空も撮ってみたいかな」


私がそう言うと彼はあごに手を当てて黙ってしまった。でも知っているこれは何か考えている時の仕草だって。私は彼が考え終わるのを待った。


「ちょっと待ってて」


彼はそう言ってまた奥に行ってしまった。

突然の行動に私はポカンとしてしまう。

さっきまでコーヒーの話をしていた翔子と美咲さんも同じようにポカンとしている。

それがなんだかおかしくて、3人で顔を見合わせて思わず笑ってしまった。


「それにしても2人ともほんと可愛いわね」


3人でひとしきり笑ったあと美咲さんが突然そんな事を言い出した。


「翔子は可愛いですけど、私は全然可愛くないですよ」

「そんな事ないわよ!タイプは違うけど2人とも可愛いもの!」


私は思わず否定してしまったが美咲さんはそれを笑顔で否定してくれる。


「翔子ちゃんは美人系ね。それで紗夜ちゃんは可愛い系!それにしてもどっちも良いわね」


そう言ってまじまじ顔をみられて私は恥ずかしくなってしまい、誤魔化すようにアイスコーヒーを口に含んだけど上手く飲めなかった。

チラッと横を見ると翔子も照れている。照れる翔子とか初めてみたかも!

そんな私たちを見ながら美咲さんは続ける。


「よかったらウチでバイトしない?」

「「バイトですか?」」


思ってもいなかった話に私と翔子の声が重なってしまった。


「夜一も放課後だったり、休みの日に手伝ってくれるんだけどもう少し人手が欲しくてさ。

こう見えて結構お客さん来るのよこのお店。

2人ならうちの看板娘になれると思うのよね。制服かわいいの用意するしどう?お給料もはずむわよ」


そう言って右手でよく見るお金のマークをつくってウィンクする美咲さんにまた見惚れてしまい思わず「やります!」と言いそうになってしまった。


「バイトはしてみたいですけど両親の許しが出るかわからないんですよね」


翔子の言葉に私は我に返った。危ない危ない。


「私もバイトに興味はあるけど、やっぱり親に聞いてみないと分からないかも」


私と翔子の返事を聞いた美咲さんは笑顔で


「オッケー!じゃあ前向きに考えてみてよ。

ご両親の説得が必要なら任せてね。2人ならいつでも大歓迎だから」


そう言ってくれたのだ。バイトかぁちょっと前向きに考えてみよう!それにここなら楽しく働ける気がするんだよね。あとで翔子に相談しようっと。



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新作になります。

完結目指して頑張ります。


連載中の他作品になります。

良かったら読んでください。

https://kakuyomu.jp/works/16818792436529928645


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宜しくお願いします!

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