異世界に転生して無敵チートなハーレム人生……だったはずなのに? くそっ、なんで俺は輪になってんだよ!?
アレクシオス˙コムネノス
第1話: 爆ぜろ!クソみたいなこの世界――転生の時だッ!
【良治元年(2030年)、大日本国・関東地方のとあるブラック企業にて】
社長室で、俺は社長と睨み合っていた。悔しさと怒りが胸の奥で渦巻く中、あのクソ野郎は片目を細め、どこか余裕を漂わせながら、やけに高そうな葉巻をくゆらせてやがった。
「…本当に、退職金すら出していただけないんですか?」
社長は冷たく笑って、ゆっくり立ち上がった。
「お前さ、自分にそんな権利があると思ってんのか?」
そう言いながら、俺の周りをゆっくりと歩き出す。こいつ…なんてクズだ。俺の頬に、まるで灰皿のように葉巻の火を押しつけやがった。
「当たり前だろ、そんな資格くらいあるに決まってんだろ!
この10年間、会社の業務の三割以上を支えてきたのは誰だと思ってる?
事務処理、来客対応、帳簿管理……全部、俺がやってきたんだ。」
「ふーん、それで?ウチには自動化AIがあるんだよ。見た目が人間っぽいだけのな。」
鼻で笑って肩すくめやがった。その態度に、俺の怒りはますます燃え上がった。
「ふざけんなッ……!
俺は、ずっと馬車馬みたいに働いてきたんだぞ。死ぬほど疲れても、
歯を食いしばって……それでも、やってきたんだよなぁッ!
十年間、一円も給料は上がらねぇし、残業代だって出たことねぇ!
俺がデスクで報告書叩いてる間に、お前は隣の部屋で助手抱いてよ……!
コーヒー淹れろって命令してきて、俺を何だと思ってんだよ!?
休日だって働いてたんだぞ……それなのに、てめぇは女と浮気かよ……!
なあ、どのツラ下げてそんなこと抜かしてんだよッ!」
「社長様であるこの私に、逆らうつもりか?」
俺の怒号を遮るように、異様なほど冷静な口調でそう言い放った社長は、葉巻の煙を俺の顔に吹きかけてきた。
「そんな顔すんなって~、見苦しいぞ?落ち着かせてやろうと思って煙を吹いてやったんだよ。あとで退職金から引いとくから、よろしくな~?」
「てめぇ……ッ!」
「怒んなって~。私の助手の喘ぎ声、タダで聞けたんだぞ?
ほんとは料金取ってもいいレベルだけど、私が優しいから許してやったんだよ。
AVの現場を生で見られて、ありがたく思えっての。」
社長は自分の指先をじっと見つめたあと、
軽く撫でるようにひと撫でして、
その爪の垢をピンッと弾いて俺の顔に飛ばした。
「ここまで面倒見てやったのに、交渉とかナメてんのか?。
恩知らずとはお前のことだな?」
その吐き気を催すような笑み――
俺の理性は、静かに、しかし確実に崩れ始めていた。
「……」
「どうした?
あれ?黙っちゃった?やっぱ図星か~?
この会社にとって、生産性のないゴミはいらねぇんだよ。
10年間のご褒美だ、ありがたく受け取れや?」
そう言って、あのクソ社長は俺の顔に向かって、豊臣秀頼の顔が印刷された千円札を投げつけてきた。
「……ッ!」
俺は拳を握りしめ、必死にこみ上げる怒りを押し殺した。
指の関節がポキポキと鳴り、その音が静かな室内に響き渡る。
そんな俺の怒りすらも楽しんでいるかのように、社長はニヤリと口角を歪めた。
嫌悪と嘲りが入り混じったその笑みは――見る者の胸をえぐるほど不快だった。
「あ、そうだ。もう一枚欲しい?ま、私の愛人にでもプレゼントしてやんなよ?」
「……どういう意味だ?」
「おやまぁ、哀れだねぇ。まだ気づいてなかったとは……お前が本物のバカなのか、それとも私が優秀すぎるのか――どっちだろうね? フフ、ハハハ!」
社長は、まるでバカを見るような目で俺を見下ろしながら、わざとらしく笑い声を上げた。
「教えてやろうか?――お前の嫁、私のこと……そ・と・う・に ご満悦だったぞ?
顔も悪くねぇし、胸もそこそこ。尻?そりゃもう、弾力ヤバかったわ~
それがどうして、お前みたいなゴミとくっついたのか……ホント、勿体ないよな?」
「テメェ……!」
「まあまあ、落ち着けって。私はただ、事実を述べてるだけだよ?」
例えば――家に帰っても家事一つしないとか、家にいる時間より外にいる方が長いとか……
それでいて、持ってるモンはさ、爪楊枝レベルの頼りなさでさ~w
その点、私みたいに顔も金も、それに"能力"まで兼ね備えた男とは、比べるのも失礼だろう?
ああ、そうそう――彼女の胸の下にあるホクロ、あれ、たまらなくセクシーだよな?……なあ?」
――なんで、あいつが知ってるんだ……!?
あのホクロのことは、俺しか知らないはずだったのに……
頭が追いつかない。
信じがたい現実に、思考が止まって、何も考えられなくなった。
俺は、この腐りきった会社で、何とか家庭を支えようと必死だった。
疲れ果てても……妻と子どもの笑顔だけが、かろうじて俺を繋ぎとめてくれていた。
最初から、辞めるなんて選択肢はなかった。
住宅ローン、子どもの保育料、年老いた両親の医療費――
全部が、俺一人の肩にのしかかっていた。
妻は家で子どもを一生懸命育ててくれていた。その苦労に報いるために、せめて金だけでも……
それしか返せなかったんだ……俺には、金ぐらいしか……
……なのに。
それでも、足りなかったってのかよ……!
俺の胸の内を見透かしたかのように――
社長のクソみてぇな一言が、またしても俺の理性をぶっ壊しにきやがった。
「ねぇ、知ってた? あいつさぁ……ほんっと〜に、
素直でさぁ……すっげぇ従順なんだよねぇ〜?
私のこと、ずっと欲しがっててさ。
体の奥まで擦り寄ってきて、喘ぎ声なんか部屋中に響いて……でもな、それがまた、耳に心地いいんだわ。
もしかしたら、もう私の子……できてるかもしれないなぁ。なぁ?
今からでも遅くないし、家に帰って私の子の顔でも見てこいよ。ガーハッハッハッハ!!」
社長は、俺の耳元にぴたりと顔を寄せ、まるで毒蛇が獲物に牙を突き立てるように、囁く声で俺の理性に猛毒を流し込んできた。
次の瞬間――その卑劣極まりない笑い声が、俺の中に残っていた最後の理性を、音を立てて引き裂いた。
「……っ!」
感情が爆発し、俺は怒りのままに社長の身体を力任せに叩き飛ばした。
「おっと?暴力かぁ?これは傷害罪だぞ?」
「俺に何ができるって?……なら、こうしてやるよッ!!!
俺のターン!ドロー!魔法カード発動!転生の秘儀ッ!
異世界転生専用・大型トラックと、特装・重量級バイクを特殊召喚ッ!!」
俺はポケットから光沢のある緑のカードを抜き出し、儀式のごとく社長の前に掲げた。
社長は鼻で笑いながら、俺を冷ややかに見下ろした。
「ぶっはははははっ!おいおい、とうとう頭イカれたか?転生だぁ? あっははっ、冗談キツすぎてマジで腹筋裂けるわ……!」
「まずはお前自身に問いかけてみろよ……今のトレンドに、ちゃんとついていけてんのか?
今、日本ではな――『転生』はもはや一大ブームだ!
毎日どこかで、トラックやバス、事故車両に吹き飛ばされて、異世界に飛ばされるヤツが山ほどいるんだよッ!!」
「お前、自分が何様だと思ってんの?使えねぇ役立たずの性不能野郎が異世界転生ぅ?"O説家になろう"読みすぎて頭やられたんじゃねぇのか?」
「これこそが……俺のアドバンテージなんだよッ!!
流行が転生なら、乗るしかねぇだろ!――ならば俺は、異世界で英雄にも王にもなるッ!
くたばれ、クソったれなこの世界!!腐りきった現実よ、今すぐ爆ぜて滅びろォォォ!!!
お前の全てを――魂も地位もプライドも、転生の秘儀の供物として捧げてやるッ!!
俺は異世界で、チート能力を手に入れてハーレム作って、世界を征服してやるんだよお おおおおおおおッ!!!!!」
その瞬間――視界の端が赤く染まり、まるで世界そのものが燃え始めたように見えた。
社長は信じられないという顔で周囲を見渡し、硬直したその瞬間……
「ブオオオオォォォォ――――!!!」
けたたましいクラクションが高層ビルの86階、オフィスの窓の外から響き渡った。
「ガシャアァァァァン!!!」
巨大なトラックと重量級のバイクが、ガラス窓をぶち破って突入。
次の瞬間、俺の身体は吹き飛ばされ、空中に舞い上がった――
……ああ、来た……来たぞ、これだ……!
これが……俺の転生なんだ……!
社長が怒りに満ちた顔で、何かを叫んでいたが――もう聞こえなかった。
俺はただ、歓喜と解放の中で、浮遊するこの感覚を味わっていた。
「テメェえええッ!!」
血?うん、たぶんドバドバ出てた……けど、そんなのもうどうでもいい。
だが――どうでもいい。
勝ち誇ったようにニヤッと笑いながら、俺は社長に向けて中指を突き立てた。
その直後、全身がふわりと宙に浮き、急激な落下感が俺を包んだ。
……風が、切り裂くように耳をかすめていく――
なのに、その音が、これほどまでに美しく思えたのは初めてだった。
落下していく景色が、まるで幻想みたいに美しくて――
俺は、ほんの一瞬だけ、そっと目を閉じた。
……そこには、思い描いた通りの異世界。
好き勝手できて、誰からも認められて、何でも思いのままになる、最高の人生。
絶対に来るよな? なあ、来るに決まってるよな!?
だって、これ――「小O家になろう」の短編なんだぜ!?
作者がさ、俺にチートもハーレムも与えないなんて……そんなの、ありえねぇだろ!?
勝利を確信し、俺は満足げに微笑みながら――ゆっくりと目を開けた。
……その瞬間。視界の隅に、ありえない光景が飛び込んできた。
え……!?
社長……あいつも、落ちてきてやがる……!?
悔しげどころか、勝ち誇ったような笑みを浮かべながら――
あいつは、俺とまったく同じ緑の魔法カードを、悠然と取り出した。
その唇が動いた刹那――俺の胸の奥で、怒りと屈辱が炎のように燃え上がった。
「妻夫木……支配するのは、いつだってこの私だ。お前じゃない――クズが。」
「柳葉!!!」
声が出ない。叫びたいのに、声にならない。最後に俺が聞いたのは――
「パキンッ」
身体のどこかで、何かがゆっくりと裂けていく感覚――
それはやがて、全身を伝うように音を立てて砕けていった。
その瞬間、身体の内側から、何か温かいものが静かに流れ出していくのを感じた。
それが何なのかは分からない……だけど、確かに、自分の一部だった。
意識が、深い霧の中に吸い込まれていくように、少しずつ遠ざかっていく――
……俺は、抗うこともなく、穏やかに目を閉じた。
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