第4話 ヤーパンってどこ!?・前編

「セラフィナ様! セラフィナ様!」


 セラフィナの目にまず一番最初に飛び込んできたのは、必死な様子で自分を見下ろしているユネの顔であった。


「……ユネ……? シオンは!?」


 一気に覚醒したセラフィナは慌てて飛び起きる。確か自分は禊ぎの水場に出現した渦に呑み込まれたはずだ。それから一体どうなったのだろう。


「それがその、何と言ったらいいか……」


 困ったように口籠るユネの姿にセラフィナはふと我に返る。


「ユネも無事なのね? 怪我はない?」

「あ、はい、私は、無事です」

「そっか、助けてくれてありがとう」

「いえ、それはその、そうなんですが……」


 どうにも様子がおかしいユネにセラフィナが怪訝な顔をした時であった。


「おや、良かった目が覚めたのかい?」


 そう声がして顔を上げると、奇妙な横開きの扉がからりと開き外から銀髪を纏めた女性が入ってきた。

 彼女はラップドレスのような不思議な服を着ている。そしてその腹は大きく膨れていた。妊婦なのだとワンテンポ遅れてセラフィナは気付く。


「貴方が助けてくださったんですか?」

「私じゃなくてうちの亭主だけどね」


 苦笑いして女性は腹を摩りながら、彼女が開けた扉の奥を指差す。そこには眼鏡を掛けた男が作業場で何やら細かな作業をしていた。

 セラフィナが声を掛ける。


「あの、助けてくださってありがとうございます」

「礼ならいらん。おかげで面白いものが見れた」


 ぶっきらぼうにそう言って男がこちらの方を向くと、お盆に何かを載せて持ってきた。盆の上にはセラフィナのお守りであるコンパクトと、シオンがくれたあのロケットペンダントが載せられている。


「その小さな鏡は神器か? 神力が強過ぎて俺には全く扱えん。だがその首飾りは面白い仕組みだ。神力で応用して同じ物を小型量産化すれば天下が引っくり返るぞ」

「こら、お前様はまた人の物を勝手にいじって」


 眼鏡越しでも分かるほどギラついた目で男は笑う。戸惑うセラフィナとユネと男を交互に見て銀髪の妊婦は重たい溜め息を吐いた。


「ごめんね勝手に触っちまって。この人呪具を見ると馬鹿になっちまうんだ。ああ、私は鶴、お鶴とみんなから呼ばれてる。この人は私の亭主の荒鷲あらわし

「オツルとアラワシ」


 聞き慣れない語感の名前をセラフィナは言いにくそうに鸚鵡返ししてから自己紹介する。


「私はセラフィナ、こっちはユネ」

「せらひ……?」

「せらふな……?」

「セラでいいです」


 どうやら聞き慣れず、言い慣れない名前なのは相手も同じようだった。

 

「ごめんなさい、ここは一体どこなんですか?」

「ミヤコだけど。もしかしてあんたたち、その格好からして外つ国とつくにからやって来たのかい?」

「はい。パナギヤから来たんです」


 セラフィナとユネの言葉に荒鷲とお鶴夫婦は不思議そうに顔を見合わせる。


「ここはヤーパンのミヤコだよ。パナギヤなんて国は知らないけど、きっと遠くからやって来たんだね」


 お鶴の言葉に今度はセラフィナとユネが顔を見合わせた。

 ヤーパンなどという国も聞いたことがない。

 嫌な予感がしてセラフィナはユネに支えられて立ち上がる。紙と木で出来た不思議な作りの戸を開けて、セラフィナはあっと声を上げた。


 知らない木、知らない山がそこにある。そして荒鷲夫妻と同じ不思議な服装をした人々が歩く不思議な街の中に自分たちはいたのだ。


 自分たちはあの渦から一体どこに飛ばされたのか。




⭐︎⭐︎⭐︎あとがき⭐︎⭐︎⭐︎


お読みくださりありがとうございます!

和風異世界ヤーパンです!!!

言ってしまえばエクソダスですからね!!

毎日前後編で更新予定です。


面白いと思ってくださった方、続きが少しでも気になると思ってくださった方は⭐︎評価、フォローをしていただけたら嬉しいです!

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