第3話 聖女断罪・後編
そこまでシオンを追い詰めていたとは知らなかった。だがシオンだってセラフィナが身体接触を拒む理由を知らなかっただろう。
(今更、後悔しても遅いのか……な)
セラフィナがシオンに何か言おうと口を開いた時である。
「セラフィナ様!」
扉が荒々しく開けられた。短い金髪を振り乱し息急き切って現れたのはセラフィナの侍女兼護衛のユネである。
「離れろ不届者!」
ユネが何かを投げた。それは2本の投げナイフである。投げナイフは銀の軌跡を描いたかと思うと、セラフィナを捕らえていた関係者二人の腕を正確に貫く。
「ぐわっ!」
両脇の悲鳴と共にセラフィナの両腕が自由になる。
セラフィナが逃げようと立ち上がるよりも、先にフスティシアの命令が神殿内に響いた。
「その難民上がりの下女も捕らえなさい! 殺したって構わないわ!」
フスティシアの言葉に周りがユネを捕らえようとする。しかし聖女の護衛を務めるだけはある。ユネの戦闘力は高く、数人がかりでも相手にならない。一人に蹴りを入れ壁に吹き飛ばし、一人を掴んでフスティシアに向かって投げ飛ばす。
「きゃっ!」
「フスティシア様!」
慌てて周りがフスティシアを守ろうと駆けつける。その間にユネはセラフィナの元へ駆けつけようとした。
しかし当のセラフィナはシオンに対峙している。
「シオン……ねぇ、シオン、」
「うるさい!」
「っ!」
必死にシオンに呼びかけるが、逆上したシオンはセラフィナに隠し持ってきたナイフを突き出した。咄嗟にセラフィナはそれを避ける。しかしシオンはセラフィナに向かって尚もめちゃくちゃにナイフを振り回し続けた。
「君さえいなければ! 僕は聖女の婚約者になんてなりたくなかった!」
「シオン……っ!」
「セラフィナ様!」
シオンのナイフがセラフィナの頬を掠める。その衝撃によろめいたセラフィナは禊用の神殿の水場にバシャンと音を立てて落ちてしまう。
刹那、彼女のポケットに入れていたお守りのコンパクトが熱く熱を帯びた。
そして驚く間もなく、そのコンパクトは神殿内と同じ純白の光を放ち出す。
「何……?」
光は神殿中を包むように広がり、やがてセラフィナがいる水場に収束されていく。そして光は何らかの異常な力で水場の水面をぐにゃりと歪める。虹色のマーブル状と言う不可思議な渦を描いているのだ。
「セラフィナ様!」
――全く、人というものは愚かなものよ――
セラフィナの耳に誰かのそんな言葉が届いた。
初めて聞く、けれどもいつも聞いていたような気もする。
「……神様?」
彼女がそう問いかけると声の主は確かに笑った気がした。
ぐにゃりとマーブル状に歪められた水場の中心が渦の力を強めていく。
「シオン、ごめ……」
シオンに向かって叫び終わる前に、セラフィナはその渦に飲み込まれてしまった。
「セラフィナ様!」
「セラ!」
「消えた!? どこ行ったのよアイツ!」
まだ渦は残っている。
ユネはシオンを突き飛ばし、それからフスティシアや他の者たちを睨みつけた。彼女の宝石のような碧眼が憎悪に燃え盛っている。
「地獄に落ちろ」
そう呪詛の言葉を吐き捨て、ユネもまた渦の中へ迷いなく飛び込む。
そうして聖女、セラフィナ・ブライトンとユネの姿はこの世界から跡形もなく消えてしまった。
⭐︎⭐︎⭐︎あとがき⭐︎⭐︎⭐︎
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