第6話 一片の証拠

翌日、警察が山荘に到着した。

厨房で見つかった証拠品はすぐに押収され、参加者一人ひとりへの事情聴取が始まる。


銀色の真空パックには、千花の指紋がべったりと残っていた。

毒物の袋にも同様の痕跡があり、冷蔵庫の管理記録から、彼が深夜に何度も出入りしていたことが裏付けられた。


「……まあ、自爆ってことか」


飯石が呟いた。

皮肉めいた口ぶりだったが、そこに笑いはなかった。


遥斗は何も言わなかった。

ただ、心のどこかに、ひとつだけ引っかかっていた。


――なぜ、そこまでして“本物”に執着したのか。


腐りかけた保存食に毒を仕込んでまで、誰かに食わせたかったのか。

それとも、自分が食べてでも“幻の味”を再び味わいたかったのか。

それともただ、世界から取り残されていく自分を、何かで埋めたかったのか。


だが、その答えは――

もう誰にも、分からない。


山の空気は、どこまでも澄んでいた。

その中で遥斗は、ただ静かに、口の中の茎わかめを噛み続けていた。


かつて彼が味わった「本物」と、同じ味かどうか――

もう、それすらも、分からなかった。

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