第3章:世間知らずですが、調査団の仕事を手伝いたいと思います
第13話 調査団が来た(4)
058 世話をしないと
ここまでのあらすじ!
100人の探掘者、5人のダンジョン庁のスタッフで構成された調査団は、日本一の巨大ギルド<ドンジョン・ティグレ>のギルドマスターであり調査団のリーダーもつとめる真島光五郎の独善的な運営によって瓦解し、60人の<ドンジョン・ティグレ>または傘下ギルド所属者――通称『虎』と、40人の無関係ギルド所属者――通称『非虎』に分かれてしまった。
下層18区ボス部屋に住み、調査団の受け入れ準備を進めていたしずく、たまき、エミリーは、非虎の40人を保護。無事にダンジョンの外へ帰れるように引率するという名目で、帰るときの寄り道としてそのまま18区ボス部屋まで案内。
非虎は当初の予定通り調査を始めてしまった一方で、虎の60人は14区ボス部屋の手前で多数の負傷者を出して立ち往生。しずくはそこへ向かい、四肢切断のあった22人を14区ボス部屋に残し、残りの38人を、パラレルワールドの18区ボス部屋まで連れ込む。
そして14区ボス部屋に残した22人を、本物の下層18区ボス部屋へ連れてくるのだった。
「なあ、しずく」
「うん、どしたの」
「調査団の夕食はどうするんや、こっちの料理はうちがやるとして」
「ああ、忘れてた、大丈夫、なんとかしてくる」
「しずくのゆう何とかは地雷しかあれへんけどなあ‥‥まあええわ」
たまきと話していたしずくは、<ラルム・ド・ブルーム>、そして野菜を適量リュックサックに入れて、配信カメラに向かって「はい、これからパラレルワールドに向かいます! 調査団のお世話をします!」と宣言する。
”おおおおおおおおおお~~~”
”偽調査団とかもうほっとけよ”
”あいつら人間じゃねえ”
”もう外に出しちゃえ”
「うーん、調査団をお手伝いすると約束しちゃったので、必要なことはします。たまきとの約束ですから」
そう律儀に答えたしずくは、17区ボスを倒して、扉をいったん閉めて、開けて、パラレルワールドに入る。
「14区から入った人は14区から出ないとダメですけど、17区から入っても同じ世界に入れます」
”へえ”
”すげえ”
”モンスターの強さは2倍だけだろ? 上層でもいけるなら俺も入ってみようかな”
”モンスターが強くなるだけ? ドロップアイテムは普通?”
「上層のパラレルワールドも普通にありますし、条件も同じですけど‥‥アイテムは違いますね。例えば下層21区のボス<ドラゴン・ゾンビ・フラムボイアント>は通常なら<ラルム・ド・ブルーム>をドロップしますけど、パラレルワールドでは<コトン・アルジョンテ>をドロップします。さらにドロップ率もいいんですよ。はぁ、<ラルム・ド・ブルーム>もそれくらいとれたらいいんですけどね‥‥あ、着きました」
”なるほど、銀綿はそこで手に入るのか”
”価値は霧の涙と同じくらいだから単純にドロップ率が2倍になることで調整してるのかな?”
”まだ価値が同じと決まったわけではないが、外野から見れば同じにしか見えない。無限大を2倍にしても濃度は上がらんからな”
”待ってこれって大事件じゃね?”
”上層2区なら戦える人多いし、みんなどんどん入っちゃうのでは”
”調査団の仕事が2倍になるよやったね”
”まあさすがに上層の調査隊は別働隊作って若手主体で組んでもばちは当たらなさそう、てか調査隊以前にそこらへんの探掘者がもう入ってそう”
”ねえええええ上層2区のボス何ドロップするのおおおお?”
”あーしずく雑談タイム終わっちゃったか、聞きたいことばかりなんだけどなあ”
”パラレルワールドの存在ばらしてから1時間以上経ってるし、もうあちこちで配信始まってるからそっち見て”
パラレルワールドを特に重要な話題とも思っていないしずくは、雑談を安易に切り上げると、18区ボス部屋の手前で立ち止まる。
ボス部屋の入り口にはモンスターが立ち寄らない安全ゾーンが存在するが、それよりも少し離れている。ここから扉へたどり着くまでに、最低でも1頭とは鉢合わせしそうな距離である。
「ここくらいなら大丈夫ですねー」
リュックサックから<ラルム・ド・ブルーム>を3個取り出す。
”おいおい家でも作るつもりか”
”近くにモンスターいるぞ”
”モンスターの前で加工するつもりかね”
「では、今から作るのは――新しい私です」
”は?”
”えっ?”
”まぢ?”
”え? え?”
”意味が分からないんだけど”
※23~29日はお休みします。次回掲載は12月1日です
※『新しい私』の名前はカタカナ3文字です
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