第46話 空港(タケル視点)

 認識が甘かった――。ユキとはいつでも会えると、俺は何の根拠もなく今までそう信じてきたが……。


 ここに来て突然の転校――。それも行き先は海外だ。


 簡単には会えなくなる。当然学校も別々となり、離れ離れの毎日が続いてしまう。


 もう一緒に登下校することも、二人並んでお弁当を食べることもなくなってしまうのだ。


(どうしてこんな急に――!)


 いや、決して何の兆しもなかったわけではない。思い返せば小4の夏だって、ユキはお父さんの仕事の都合で引っ越ししていたのだ。


 転勤の多い仕事なら、また同じことがあるかもって……。ちょっと考えれば分かりそうなものなのに。


(そんなことにも気づけずに、俺は――!)


 プールでのユキを思い出す。ウォータースライダーの後、去り際に寂しそうな顔を見せた彼女。


 あれは俺との別れが辛くて――それであんな表情をしていたのだと理解した。


「くそっ!」


 空港内を必死に走る。行き交う人々の間を縫うようにして、出発ロビーへと駆け込んだ。


(間に合え――っ!)


 行き先はニューヨークだと三田から聞いていたので、近くにいた係員をつかまえて尋ねた。


「ニューヨーク行きの搭乗口はどこですか⁉」


 どうやら成田からニューヨークへの直行便は、一日に一本しか出ていないらしい。つまり、これから出る便がユキの乗るそれだということだ。


「〇〇航空のニューヨーク行きは、今まさに離陸するところですが……」


 えっ、と俺は絶句する。慌ててロビーの大きなガラス窓に駆け寄った。


 そこからは飛行機の離着陸が覗けるようになっていて――たったいま動いている機体が、ニューヨークへ向かう便なのだと教えられた。


「そ……そんな……!」


 間に合わなかった――。ユキはあの飛行機に乗って、遠く離れた異郷の地へと旅立ってしまうのだ……。


 もう会えないのだと思うと涙がにじんでくる。これまでのユキとの日々が、さながら走馬燈のように脳内を駆け巡った。


(ユキ――っ!)


 どうしても離れたくなくて俺は、高ぶった感情のままに走り出す。あの飛行機へとつながる国際線の搭乗ゲートを発見し、無理矢理突破しようと試みた。


「お、お客様⁉ そのようなことをされては困ります!」


 もしかするとまだ間に合うかもしれない。なんとしてでも飛行機を止めたい一心で、俺は係員らの制止を振り切った。


「行かないでくれユキーっ! 俺を一人にするなーっ!」


 男性スタッフらと揉み合いになる中で、魂の叫びが爆発する。腕や足を押さえられても、俺はしゃにむに前へ進もうともがいた。


 もうちょっとで突破できると思ったところで――ふいに、何者かからポンと肩に手を置かれた。


「あの……。何やってんのタケル?」

「え?」


 この声はまさかと思い振り返ってみると――。


 そこに立っていたのは紛れもなく俺の彼女――ニューヨーク行きの飛行機に乗ったはずの渚ユキだった。


「…………え?」


 ……………………あれ?






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


このあとめちゃくちゃ係員さんたちに謝って、どうにかおとがめなしにしてもらいました。青春するのもほどほどにしないといけませんね。

次回から解決編みたいな回です。

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