第20話 お洒落カフェ(タケル視点)

「ここは……?」


 俺の手を引いたユキが案内したのは、見るからにお洒落な雰囲気のカフェだった。男一人では入りづらい空気が、外観の時点で漂っている。


「ここの映えスイーツがいま話題らしくてね。一度食べてみたいと思ったんだ」

「え……。ええ⁉ 映えスイーツですと⁉」


 男に憧れているのなら、趣味嗜好の類も男寄りになるのかと思っていたが……。ユキが提案したのはまさかの映えスイーツだった。


「ああもう待ちきれないよ。さっそく店内へ入ろう」


 中も女子~な空間で、男性客一人というパターンは見受けられなかった。いるとしてもカップルで来ているというケースである。


 ユキはお目当てのパンケーキを注文。フルーツやホイップが盛り盛りになったスイーツが届くと、目を輝かせて食べ始めた。


「ふおっ! 甘くておいしい~っ! これが嫌いな女子はいないよ!」


 まあ女子だからな、医学的には……。本当に心から堪能しているようで、ん~と悶絶しながら進めていた。


 俺は一番無難そうなサンドイッチを注文。パンケーキに魅了されるユキを目の前に、もそもそと咀嚼していた。


「今日はタケルが奢ってくれるんだよね?」

「あ、ああ……」


 ユキが毎日お弁当を作ってくれることになったので、せめてものお礼という趣旨でお出かけに誘ったのだ。


「甘い系でよかったのか? もっとがっつり……。焼き肉とかでもよかったんだぞ?」


 ラーメンとか牛丼とかの方が好きというパターンは? と思い、それとなく質問を投げかけてみる。しかしユキは男っぽいがっつり系に反応しなかった。


「このお店がよかったんだよ。かわいいスイーツとか写真に撮りたかったんだ~」


 カフェラテに描かれたラテアートを、ユキはスマホでパシャリと撮影する。撮った写真を満足そうに眺めていた。


「かわいい~。こういうことがしたかったんだよボクは」


 一人称は『ボク』だったが、そうする姿は紛れもなく可愛らしい女の子のようで。


 こんな風に男女カップルとしてデートできればな……と、俺は自然な願望を心に抱いていた。


(けど……)


 俺はユキの秘密を知っている。例外的に甘いものに目がないようではあったが、基本的には男という性別に憧れを持っているのだ。


 屋上でお弁当をいただいた時などは、『こんな子がお嫁さんだったらな……』と妄想してしまった俺だが、そんな風にユキを見ることは許されない。


 男子の制服で再会してきたユキは、あくまで男として扱われたがっている性的マイノリティーであることを、俺はここで今一度自分自身に確かめた。


「どうかなタケル? こういう女の子が好きそうなスイーツ食べるボクを見て、何か気づくことはないかい?」


 ならば、『甘々なパンケーキに夢中になるなんて、お前はやっぱりかわいい女の子だな!』と答えるわけにはいかない。


 本当はそう言ってやりたくてうずうずしている。もうここまで出かかっているのだが、心に思った感想を素直にぶつけてしまうわけにはいかないのだ。


(思えばあの時もそうだったな……)


 クラスの女子からいじめを受けた(?)ユキが、無理矢理穿かされたスカートで登校してきた時。


 エチエチな太ももをチラチラさせるユキに、「スカートもいいけどズボンの方が……」なんて答えたのは、なかなかに至難の業だったなと振り返る。


 今日だって俺目線では男女デートという認識だから、『もしかしてユキのやつ、私服のスカートとか穿いてきてくれるんだろうか?』と密かに期待していた。


 そうだったら嬉しいなあとワクワクしていたのだが、彼女が選んだのはパンツルックのコーデだった。いやそれもスタイリッシュな感じで似合ってはいたのだが、本音をいえばスカートの方がよかったなあ……なんて思ってしまう。


 俺はユキの『親友』。だから本心を押し殺して、彼女の願望を叶えてやらねばならない。


 クリームたっぷりパンケーキを堪能しきったユキに対して、ベストな回答を与えてやった。


「お前って……スイーツ男子だったんだな!」


 しかしその瞬間、ユキの表情はピクと引き攣った。ただらなぬ雰囲気をまとわせて凄みを利かせてくる。


「…………あ゙?」


 ヤ〇ザも真っ青な顔で睨みつけていた。


 あ、あれ? この路線で合っているはずでは――? 外した覚えなどないのに、明らかにお気に召さないリアクションだった。


「……次、行ってみようか」


 ゆらりと立ち上がったユキは、グイと俺の手を引いて次へ進んだ。ちょっと手が痛いなと思ったが、俺は何も言えなかった。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


また失敗……(´;ω;`)ウッ…。報われる時は来るのでしょうか……。

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