第11話 自覚(ユキ視点)

「ええ⁉ また気づいてもらえなかったの⁉」


 教室に入るなり、あやねが朝の様子を聞き出してくる。スカートルックでも女だと気づいてもらえなかったと聞いて、「そんなバカな」と目を見開いていた。


「こんなにエロかわいいのに!」


 あやねの姉よりも私の方が若干背が高かったため、実際に穿いてみるとわりとミニのスカートになってしまった。

 うちの学校は校則が緩いのでしょっぴかれることはないと思うが、ズボンで隠していた肌を晒すのはちょっと恥ずかしかった。


「ごめんね~? ピッタリサイズかと思って渡したけど、うちのお姉の方がちょっとだけチビだったよ~」


 サイズ違いを渡してしまったことを詫びるあやね。しかし私的には……。


「確かに女だって気づいてもらえなかったし……」


 パンツまで見られてしまったわけだが。


 というかパンツまで見られたのに女だと気づかれなかったって何だよ。そんなに男子みたいなお尻してたか私。

 まあおっぱいを大胸筋だと思うタケルだしな……。


 正面から見せればことが布の上からでも分かるだろうけど……。さすがにそんな痴女みたいな真似したくないしなあ……。


「スカート作戦は不発に終わってしまったけど……」


 でも、嬉しいこともあったのだ。


「――一瞬だけ、似合ってるって言ってくれたんだ」


 そのあとすぐに否定されてしまったが、一度だけスカート姿を褒めてもらった。


 私自身はボーイッシュな見た目ということもあり、女の子らしい格好は似合わないと信じ込んでいたが……。


「自分もこういう格好してみていいのかなって……」


 少し女としての自分に自信が出てきた。


「いいに決まってるじゃ~ん! 渚ちゃんそんな風に思ってたの?」


 あやねもイケてると褒めてくれるし、それはたいへんありがたい言葉だったのだが。

 タケルに言われるのは、ほかの人に言われるのとは違う。


 もしかしたら彼は、自分にとって特別な存在ではないか――と、私は意識し始めた。


「あれあれ、どうかしましたかな~? なーんかまた乙女な表情しちゃってるけど」

「へ⁉」


 そんなに変な顔しちゃってただろうか。タケルのことを考えるとどうも調子が狂わされる。


 外では風が吹いてパンチラしてしまうかもしれないから、これから毎日一緒に登下校して守ってやると言われた時も、どきんと心臓が跳ね上がるのを感じた。指の先まで熱くなってしまったなと思い出す。


 ……手を握った時、タケルは変な感情とか読み取ったりしなかっただろうか……。

 例えば私が、友達以上の関係性を望んでいるとか……。


(――って、んなわけないない!)


 男に間違われるような自分が、いっちょ前に恋愛とか。

 スカートは似合うと一応言ってもらえたが、そういう女子高生みたいな青春、私に合っているはずがない。


(でも――)


 こんな自分でも、もし周りの女の子たちみたいに恋愛していいんだったら……。自分のことを「守る」って言ってくれる人がいいな……。


 思えばもそうだった。小4の夏休みに山で遭難しかけた時も、タケルは私を守ると言って、実際その通りに実行してくれた。


 もしかしなくても私……その時からタケルのことを――?


 自然と口角が上がってくる。心が幸せな想いで満たされるような気持ちがした。


 あやねの顔を向いて、私は尋ねた。


「このスカート、しばらく借りたままでもいいかな?」


 彼女は快くうんと頷いてくれた。


「もちろん。それはあげたつもりだったしね」


 あやねは私の微細な変化に気づいたのか。


「なんかいい顔になったね。何か思いついたのかな?」


 と心を読んだようなことを言ってくる。こと恋愛に関して、女子高生という生き物は本当に敏感だ。


「うん、ちょっと……」


 スカート作戦に移ったのは、あくまであやねの指示によるものだった。ここまで消極的な部分もあった私だが、ここからは攻勢をかけてみようと意気込む。


「今日の夜から仕込みして、明日渡してみようかなって」


 考えていることを伝えると、あやねはびしりと親指を立ててくれた。


「いいじゃないかそれ! 絶対家庭的なだって思ってくれるはずだよ!」


 友達からも太鼓判を押されて、ぶつけようとしている作戦に自信がつく。


「ありがとう」


 どんなメニューにしようか考えながら、日中の授業をやり過ごした。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ここからは攻め気なユキになりそうです。フォローと☆☆☆で彼女を応援してあげてください。

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