昔私のことを男子だと思って遊んでいた幼馴染が、"お前女だったのか⁉"といっこうに言ってくれない件
十文字ナナメ
第1話 ひと夏の思い出(ユキ視点)
小学校四年生の時、夏休みの間だけ一緒に遊んだ男の子がいた。
普段は都会で暮らしているその彼――
が、それも今日で終わり。
お盆が終わって都会へ帰ると話すタケルの前で、私は情けなくも泣きじゃくってしまった。
お別れしてしまうのが寂しかったのだ。夏休みの間だけという短い期間ではあったが、彼とはお互いに親友と呼べるような時を過ごしていた。
「おい泣くなよ~。来年の夏にまた会えるんだからさ」
また帰省したタイミングで再会できるとタケルは話してくれたが、それは叶わないことなのだ。
この夏が終われば、私はお父さんの仕事の都合で、遠くの街へ引っ越すことが決まっていた。
今にして思えば、お互いの住所など聞いておけばよかったが、当時はそのことに気づけずそのまま別れてしまった。
彼が都会のどこへ行ってしまったのかも知らず、私は私で故郷の田舎を家族と一緒に離れた。
☆
あれから5年余りの歳月が流れ、私は志望する高校の合格発表にやってきていた。
校舎前に設置された掲示板に自分の番号を見つけ、やったと小さく喜びを嚙みしめる。
さっそく家族に合格を報告しようとスマホを取り出したが、どうせなら帰って直接伝えようかなと考え直す。
徒歩で帰宅しようと踵を返したその時、少し離れた位置にある男の子の姿を認めてはっとした。
彼だ――小学校の時にひと夏だけ一緒に遊んだ、幼馴染の佐久間タケルくん。
身長は伸びていたが面影には当時の名残があって、私にはすぐにタケルだと分かった。「よし!」とガッツポーズしているので、彼も合格したのだなと理解する。
そしてタケルが着ているのは、私の家からわりと近くにある中学校のものだった。私が通っている中学とは別の学校だったが、けっこう近所同士にいたのだなと今になって初めて知る。
もっと早くに知る機会があれば、すぐにでも再会できたのにとやるせない気持ちが押し寄せてきたが。でも今からでも遅いことはない。
彼と同じ高校に通えることになったのだと分かって、嬉しさがこみ上げてきた。家も近所同士だったのであれば、一緒に登下校とかもできるかもしれない。
心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる……。幼かった当時のことがにわかに思い出されて、私は胸がいっぱいになった。
声をかけようと思うが、そこで私はちょっとした遊びというか――あるドッキリを思いつく。
彼との再会は楽しみにとっておいて、いったん兄に相談するべく家へと向かった。
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