幼い憧れと邂逅の物語が始まる
- ★★★ Excellent!!!
<第1話 始まり −Side Emery−を読んでのレビューです>
街を行進する親衛隊、その中で一人の騎士の姿に心を奪われる十二歳の少女。物語は、彼女の視点を通じてその瞬間の熱や戸惑いを、過不足なく描き出していきます。場面は淡々と進むのに、読んでいる側はそのまなざしの強さに引き込まれる。
印象的なのは、「エメリーはマイケルのあの虹色の瞳を思い出して、くすぐったい様な、恥ずかしい様な、体が暖かくなる様な不思議な感じがしていた。」という一文。
ここには、言葉ではまだ定義できない感情の芽生えが、ひどく具体的に、けれど説明しすぎずに表現されています。読者は説明を受けるのではなく、体感するようにその情景を共有できるのです。
無邪気さと憧れが、未来への伏線のように重なっている。そうした空気の中に身を置くことができる点に、この作品の魅力がありました。