にほんかいこわい

小川るり

第1話

遠い国の戦争のように首だけが近所の床屋にころがつてゐる


坂のぼる坂をくだって米を買う アクセントは「さ」がおかしいらしいよ


IHじゃマシュマロ焼けないみたいにさ 生活ぐるぐるグルーヴ足りない


大学を泳いでわたしはジェリーフィッシュ 梅雨が明けたら脳をくださる


汗を吸う布はあたしじゃないですよ おしゃべり除湿機だけが味方か


幼子の泣き方上手く真似できず流す涙の色で塗る壁


泥水と親が評したコーヒーの優しさ ねえあたし悪い子だよ


波の中似合うあなたは人魚姫こっちに来ないの ああ、しにたいの


あの頃のわたしはなんであんなにも刃物をまっすぐ引けたんだろう


知らぬ土地で知らぬ魚が並ぶのを知らぬ言葉の老女が手に取り

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

にほんかいこわい 小川るり @yur_ari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画