第4話:繰り広げられる激甘対応

「では……明日からの授業は……?」


校長先生の言葉に、朝霧先生は考え込んでしまった。


「ちなみに、何の教師なんですか?」


朝霧先生は私の質問と全く同じ質問を校長先生に投げかけた。


「……英語と聞いているが……」


「英語!?」


私は思わず声が出てしまった。しかもかなりの声量の。思わず口を手で押さえる。


「……英語ではないのかね……?」


校長先生は私の反応に恐る恐る聞いてくる。


「ではないのかね?」と聞かれても私も困る。

そもそも教師じゃないし、英語なんて全然できないし、教えるなんてムリ!


私は怯えた子犬のように小さく小刻みに首を振る。


「そんな反応されてもこっちも困るのだが……」


校長先生は頭を抱えている。そんな私と校長先生の様子を見て、朝霧先生は言った。


「とりあえず、今日、病院に行って診てもらいましょう。話はそれからです」


朝霧先生はそう言うが、そもそもどうやって病院に行けば良いのか?この足で。

身分証とかないし……。


近くを見回すとカバンが置いてあることに気づく。


そういえば、あそこに立ってた時から持ってたな。このカバン。

このカバン、私のなのかな?


私はカバンを開けて中身を確認した。


財布に免許証に保険証……。全て私のものだった。とりあえず病院には行けそう……。


私はチラリと朝霧先生を見た。すると朝霧先生はにっこりと微笑んで私に言う。


「安心してください。私が付き添いますから」


なにそれ? 何でそんなに優しくしてくれるの?


私の知っている男性は、都合がいい時だけ猫撫で声で近づいてきて、私の懐から無心でお金をせびり、都合が悪いと暴言を吐く、そんな人ばかりだった。暴力を振るわれないだけずっとマシなんだと思っていたくらいだ。


そういえば、あのイケメン高校生――黒崎くんも、私が歩けないとわかるや否や、抱っこしてここまで運んできてくれた。あの年の男の子なら恥ずかしがって悪態ついてもおかしくないのに。


そんな私の困惑をよそに、朝霧先生は淡々とことを進める。


「ということなので、今日は保健室を空けますが、校長、よろしくお願いします」


校長先生はやむを得ないと許可を出した。


「藤野先生、気をつけて。診察終わったら連絡ください」


校長先生はそれだけ言うと、保健室を後にした。


「私も裏から車回してきますので、藤野先生はここで待っててください」


そう言って朝霧先生も保健室からいなくなり、私は一人保健室に残された。


これは一体どう言う状況……?

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