第13話 水難

 ゴボゴボ。水を飲んでしまう。

 カツカツカツ。

 松葉杖をついてた。

『彰ちゃん、どうしたの?』

『階段から落ちたんだ』

『痛い?』

『少しね』

『公園行かない』

『いいよ。行こう』

『ゆっくり行こう』

『そうしよう』


 急に体が引き上げられた。

「大丈夫ですか?」

 監視員に助けられた。僅かな時間だった。私は返事もできずに咳き込んだ。

 そのままプールサイドまで抱き泳ぎで連れて行かれた。

 なんとかプールから上がると

「足が…つってしまって」と言い訳をしてしまう。

「準備体操しっかりしてくださいね。他に何か異常はないですか?」と聞かれる。

「…はい」と私は俯いた。

 監視員は体つきがしっかりしてて、なんだか恥ずかしくなる。

「救護室行きますか?」

「あ、大丈夫です。もう…帰ります」

 私はお礼を言うと立ち上がった。そしてそそくさと更衣室に向かう。足がつっていたので、少しびっこひきながら歩く。

 彰吾くんは怪我をしていた。それは自分で? それとも誰かに押されたとか? そこはなにも分からない。でももし誰かにされたとしたら、突然、言いようのない怒りが全身を支配した。

 もしそうだとしたら?

 あの日、彰吾くんは松葉杖じゃなかったはず。そしたら死ぬことはなかった…。そして私も…。

 誰かがいるとしたら…

 私は復讐をする。

 

 シャワーを浴びながら、ただの事故じゃない気がしてきた。おばさんに聞いてみようと思った。

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