第10話 頭の上に数字が見えるアレ

 頼まれてた仕事が済んで休憩していると安住がこちらに来た。



「佐伯さんお疲れ様です」


「あぁ。安住もお疲れ」


「ところで今私には佐伯さん頭の上に数字が見えています」


「何の話だいきなり……」


「あれですよー経験人数が頭の上に見えるやつ」


「あーそれかよ……で、なんて浮かんでるんだ俺の頭の上には」



 恒例の突発的な切り出しにはもう慣れた。


 適当に聞き返す。



「賢者タイム 短く 方法」


「おい数字は。あとなんで俺の今の思考がそれなんだよ!」


「私が来た時ぼーっとしてたので」


「ぼーっとしてる男が全員賢者だと思ってんのか……!」


「実際のところは小学生の時にカナちゃんとした1回きりなんですよね?」


「高校生でセカンドDTはこじらせすぎだろ」


「ちなみに賢者タイム中って何を考えるんですか?」


「あぁ? 人によるけど……多分「何してんだ俺」とか「俺に何ができるんだ?」とか冷静な思考になるなぁ」


「なるほど。参考程度に覚えておきます」


「そうか」


「なんの参考にだよ、とか聞かないんですね」


「なんの参考にもならないからな」


「そうですか。じゃあここからは佐伯さんに当ててもらいます」


「俺が?」



 安住はカバンからノートとペンを取り出した。



「今から書く数字が私の何を意味してるか、当ててもらいます」


「そういうことか。当たる気がしないけど……」



 安住に関してエロコンテンツ以外の会話がなかった。


 正直知らないことは多い。



「ちょっと待っててください」



 さらさらとペンを走らせる安住。



「はいよ」

 


 軽く返しつつも思考は肝心となる部分に集中している。


 まさかこれでマジの経験人数が……。


 ビッチって事はなくても1、2人くらい経験していてもおかしくない。



「はい」



 大きく「3匹」と書かれたページを開いて頭上にかかげる安住。



「3「匹」か。なんだ……?」


「ヒントとして単位はつけました」


「無難にペットの数か? いやでも安住がペットの話題聞いた覚えがないな」


「というか無難な話題を喋ったことありましたっけ」


「ないな……」



ということは実質ノーヒント



「いいんですか経験匹数とかって答えも考慮しなくて」


「なんだ経験匹数って。ねえよ」


「夢がないですね、まぁ正解です」


「だろうなって感じだけど1問目だしな」



 もっと核心に迫る問題はここからか。



「次はこれです」



 パッと頭上にかかげられた数字は「3」



「うーん「3」か」



 すかさずページをめくる安住。


 次のページには「2」



「おいなんか変わったぞ……」



 すぐに次のページへ。


 次は「1」



「またか?! なんか減っていくし」



さらにめくり「ぜろ。ぜろ。ぜろ・・・だぁ~め」と書かれたページに。



「……でなんだよこれ」


「焦らしたんですからちょっとは悶えてくださいよ」


「ただのフリップ芸かよ……」


「イきました?」


「イくか!」


「ナイスイキ我慢」



 笑顔でグッドサインする。



「違うからな……」



 やっぱり適当に遊んでるだけで「安住の経験数」に関しては知れないのか……。



「次からちゃんと出題するので安心して下さい」


「あ、あぁ。そうしてくれ」


「230……? 安住ってゲームとかやりこむ方だっけ?」


「うーんと、そこまでは」


「そうか……」



なにかの数値のだと思ったが違いそうだ。



「正解はスリーサイズの合計ですね」


「へ、なにっ! それは……」


「でも合計ですからね? そこまでリアクションしますか」


「合計が230……スリーサイズの黄金比は1:0.7:1とされている。安住のスタイルは割とそれに近い、230を1+0.7+1=2.7で割って85.185~これに0.7をかけて59.629~ただ実際は黄金比よりも安住のウエストはほっそりしていることが分かる。より近似するには0.65あたりが最適か……」


「あのぉ佐伯さん、怖いです」


「あ、すまん……」



 恐怖と羞恥の混じった顔で後ずさる安住。



「うぅ、私もちょっと出題ミスだったかもしれません……。次行きますか」


「あぁ」



 仕切りなおして、次の数字は「6人」だった。


 ここにきて「人」という単位がきてしまった。



「6「人」……いや、まだ決まったわけじゃ」


「さぁどうでしょう」



 落ち着け。きっといつものひっかけだ。



「毎回その手には引っかからないぞ……」


「2回に1回くらい引っかかってる気がしますけど」


「うっ、そんなことは」



 でもウラのウラって可能性も……?



「まさかホントに安住の経験人数、とかか? いや」


「正解です」


「なっ、えぇ……?!」



 ほんとに正解してしまった。


 マジか。5人って結構じゃないか?


 俺が幻想を抱きすぎなのか。



「お前、結構ヤることヤッてるんだな……」



 平静を保ってる風に言う。


 が、頭の整理がつかない。 



「え? 私のではないですよ?」


「は……?」


「正確には私の母の元カレの人数ですね」


「はぁ?!」


「だって“安住“のって聞いたじゃないですかー」



 こいつ……。



「もうお前のクイズじゃないだろ……。元カノの人数=経験人数ってのもどうなんだよ!」


「では、佐伯さんの処女厨が明らかになった所でお開きにしますかね」


「聞けよ。あと俺を処女厨にするな……」


「えー違うんですか?」


「違う、と言いたい」



 全女子がそうであってほしいわけではないから「厨」ではない。多分……。 



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