第100話「定期報告と再確認」
#第100話「定期報告と再確認」
今日は定期報告の日。ひよりと共に朝倉さんのオフィスに向かった。つい先日、臨時で使役モンスターの人化の件を持ち込んで話をしたばかりだから少しだけ妙な気分だな。
オフィスの扉を開けると――いつものようにエリナさんがいる。やっぱり暇なのかな?おっと、睨まれるから深く考えないでおこう。透子さんもいて、こちらに手を振っている。もしかして透子さんは俺の定期報告のメンバーになったのかな?
「まず一つ。ラムとリンは“人化したまま”でもスロットから出せます」
「ほんとに!」
透子さんが目を輝かせてメモを始めた。
「ほう、それは朗報だな。使役モンスターの人化がばれる可能性が下がる。でも再現性の確認もした方がいいだろう。時間がある時にでいいから他のダンジョンでも同様に出せるか、必ず検証しておいてほしい」
「了解です。帰りに久しぶりに新宿ダンジョンに寄って試してみます」
「いつもレンくんは動きが早いな。助かるよ」
「レン、人化したままで出した後に再びモンスター化、そして人化できるかも確かめてくれないかな?もちろん周りに人がいなければだけど」と透子さん。
「分かりました。状況を見て判断します」
さすが朝倉さんだ。俺は肝心なことを確認していない。そして透子さんも凄い。確認事項を瞬時に考えてくれた。この辺りは1人では思いつかないことだからありがたい。
次に今後の方針の話に移る。先日よりも詳細な話をした。
「今後、当面はルフとクーの育成を最優先で続けます。ロアは引き続き、ひよりと2階層でお願いしたいと思います。俺とラム、リンは4階層の周回もやりますが、ラムとリンのいずれか1人はローテーションで1階層での育成に回ります」
「レベル1の使役モンスター、ルフとクーだったか?その2体をレベリングで育てるのはどうだ?そろそろ、もう裏技の金箱狙いは不要だろう。レベルアップの効率を考えるならありだとは思うが?」
「それはやめます。俺の使役モンスターはきちんと戦って強くなる方を選びます」
「分かった。時間はかかるがその方が地力になるしいいだろう。さっきの提案はあくまでも確認のためだ、忘れて欲しい」
そこから話は恩方ダンジョンの運用へ。
「低階層の特別報酬解除はまだそのままでいいかな?今までの話を聞いた限りではまだ当面は恩方ダンジョンの低階層にいるようだが?」
「そうですね。今の恩方ダンジョンの過疎の状況がありがたいので移動するつもりはありません。当面は特別報酬解除のままでお願いします。しばらく俺が恩方に常駐すると考えてもらって結構です。移動する場合には必ず連絡させていただきます」
「了解。過疎ダンジョンはモンスター滞留からのエネルギー上昇によって氾濫のリスクがある。君が低階で活動してくれる間は安全だ。裏で調整を続けておくよ」
ありがたい。俺たちが何も考えずに討伐を続けられるのはこういう影の管理のおかげだ。胸の内で頭を下げる。
「じゃあ今日はそれで。秘密保持、引き続き頼む」
「はい。ありがとうございます」
打ち合わせ後、ひよりはそのまま朝倉さんのオフィスに残った。別件でもう少し話があるらしい。日頃はロアの育成をお願いしているから仕事がたまっているのかもしれないな。申し訳ないところだ。
一方で俺はその足で新宿ダンジョンへ向かった。新宿ダンジョンは久しぶりだ。こちらに来なくなって1年近くになるのかな。ある意味、ホームタウンみたいなところでもあるので心が躍る。
エントランス脇の死角で深呼吸し、念話で呼びかける。
<<ラム、リン。人の姿で出てきて欲しい>>
数分後、2人(2体)が人化状態のまま出現した――成功だ。念のため、周りをみて人がいないことを確認し、モンスター形態に戻ってもらってから再び人化。これも問題なし。
(少なくとも新宿でも再現した。おそらくはどのダンジョンでも問題はないだろう。まずは一安心だ)
軽く4階層を覗く。丁度良く5体混成の敵モンスターの群れが前を横切った。
「ここで軽く1時間ぐらい討伐していこう。3人(1人と2体)なら対応できる。最初は俺とラムが盾役でリンがアタッカー、その後しばらくしたら役割を交代しよう」
「了解です」
「了解ですです」
俺とラムは盾役でひきつけながら弱い個体から倒していく、アタッカーのリンは自由に動き回り倒していく。もちろん3人(1人と2体)共にウルフを牽制しながらの動きだ。確実に削っていった。かなり安定している。最後は残ったウルフを三方からたこ殴りにして終了。
ここ新宿ダンジョンは恩方ダンジョンより体力寄りだから楽だな。少し手間はかかるが油断さえしなければ全く問題はなさそうだ。
(……新宿ダンジョンなら15体でも問題ないな。時間があればこっちでたまに討伐するのもいいだろう)
数時間後、討伐を終えた。1時間で終わるつもりが楽しくて長くなってしまったよ。討伐が順調でちょこちょこ銅箱も出てきて楽しくなったという事情もある。4階層からは宝箱が20体討伐に1回ぐらいの割合で出てくる。まだ基本的に銅箱しか出ないけどね。
帰り道、それなりに賑わう1~2階層を眺める。久しぶりに見る景色だ。おれが育ったのもここなんだよな。ちょっと感傷に浸ってしまった。
「ラム、リン、ここは覚えているか?」
「はい、覚えています。私たちが宝箱から出てきて最初に活動した場所ですね」
「はい、もちろんですです。懐かしいですです」
俺はここ新宿ダンジョンで討伐を始めた。寝不足になりながら、きつい体を引きづりながら1万体をなんとか討伐して裏技の金箱、そして使役モンスターのラムが出てきた。そこからハンターとしての人生が大きく変ったんだ。
そう思うとここ新宿ダンジョンにも感謝したい。俺の人生を変えてくれた場所だ。
でも感傷に浸っていてもいけない。明日からはまた再びルナの道場での稽古、恩方ダンジョンでの討伐が始まる、育成も必要だ。まだまだやることは山のようにある。
積み上げを崩さずに、地力を厚くしていく――それが、今の俺たちの答えだ。
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