第44話 離れて行かないように

夕方。

涼太からメール。


”親には言えない

こんな事を聞かされたら

ただでさえ姉ちゃんの事を心配してるのに

両親、倒れる

だから

明日の栞の帰国パーティー

姉ちゃんは来ないで

俺と來未もその事にはふれないから

栞にも

お前に善意があるなら

何も言うなって言っといて”


その画面を見て、正直、落ち込んだ。

弟は、私たちの事を、心の奥から軽蔑しているのだろうと、想像できた。


私たちはそんなに悪いことをしているのだろうか?


皆に言うつもりなんてなかった。まだいえる状況ではなかった。

だけど、涼太があんなに怒ってしまうほど、この恋は、酷いものなのだろうか?こんなに好きになった人と、やっと両想いになれたのに。


この思いが、間違いだと言われているようで、


辛すぎる。


私はホテルについても、そんな事ばかり考えていた。心ここに在らず。


そんな私を心配するように、栞が一生懸命にさっきまでの事を忘れさせようと、色々話してくれている。だけど、あまり栞の声は私に入らない。


「悠ちゃん」


栞はスマホを見つめて涙ぐむ私を抱きしめて、


「せっかく会えたんだよ。今は、俺だけを見て。

俺の事だけを考えて。お願い」


その悲痛な声に、やっと我に返る。


そうだ、傷ついているのは、私だけではない。

こんな顔してちゃ、いけない。


栞は、私のオデコにキスをした。


私は一つ涙をこぼす。

不安な気持ちと罪悪感のような気持でフラフラする私。栞は、私が離れていかないように強く抱きしめた。



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