第34話 突然の告白

早川の表情。怒っているわけではないけども、真剣で、だけど、穏やかにも見える。何か覚悟を決めたかのような。私は彼が、どんな話をするのか?ドキドキしている。


彼は一呼吸して、話し始めた。


「先月の話なんだけど、男の子からナンパされてね。彼の誘いでスタバに行ったんだ。」


???スタバ???

なんの話?

話の筋がまだ分からない。何かのジョークで、この緊張を和らげようとしてるのかな?しかし、彼は至って真面目な表情で、困ったように微笑みながら話を続けた。


「男の子って言うのはね。栞くんの事なんだけどね。」


えっ?


耳を疑った・・・。


早川の口から栞の名前。


「ごめんね、悠。実は、彼と二人で話をするのは2度目だったんだ。」


驚く。驚きのあまり、言葉は出ない。二人が二度も私の知らないところで会っていた。


どうして?


「僕らがここで彼に会った時の事覚えてるかな?

栞くんがここでアルバイトをしていることを知ったあの日。僕は君が彼を見る表情に気がついてしまったんだ。僕の勘は、意外と当たることが多いんだ。僕にとって悪い事は特にね。どうしても彼と君との関係が気になってしまってね。で、後日、それを確かめるために彼と会った。こんな大人から呼び出されるなんて、嫌だったろうと思うけど、彼は逃げずに僕と向き合ってくれたよ。」


私は、ただただ頷く。


「彼に聞いたよ。悠さんとの事。どう思ってるのか。もちろん僕の気持ちも伝えてね。そしたら彼、あんな優しい顔つきなのに、急にキリッとした男らしい顔になって、


”好きです。悠ちゃんのことは、ずっと前から好きです。だから、誰にも渡しません”


そう言い切られたんだ。もちろん、その時すでに君たちが深い関係に進んだことも聞いた。ショックだったな~、マジか?と思った。

だって高校生だし・・・、少年だよ。確かに彼は魅力的な人なのは、僕も話をしていて感じた。でもね・・・。まだまだ子供と大人の間で、彼は子供だからね。しばらく考えたけど、俺は彼に言ったんだ。


”君は彼女をその場しのぎではなく、永久的に幸せにできる確証はあるのか?”


って、きっと彼にとっては意地悪な問いかけをした。だって、彼はまだ決断できる材料がない。生まれたてのヒナのようなものだから。彼にとって″永久的に″なんて、未知の世界だったと思う。


“君と僕らは費やす時間の使い方が違う。君の今は、僕らはとうに通りすぎた過去の道の最中にいるのだから、どう考えても無理があるんじゃないか?

身の丈に合っていないと思わないか?絶対に君らの関係は破綻する。断言できる。その時、彼女のそばに僕はいるよ“


僕も大人げなく、彼に強めに話してね。

彼、考えてたよ。しばらく黙ってたな・・・。


だけど、僕を真っすぐに見て、


”俺は悠ちゃんが好きです。悠ちゃんだって俺が好きです。邪魔しないでください。あなたは俺たちにとて邪魔者以外の何もにものでもない!!”


そう言い放って帰っていったんだ。その時の僕は、彼の不安定な真っすぐさを見せつけられて、不快感で一杯になってね。絶対に君をあきらめないって決めたんだ。」


そうだったのか・・・。そんな事、知らなかった。栞は何も言わなかった。早川も。知らなかったのは私だけだった。


「それから、彼とは会うことも無かったんだけど。

先月、彼が突然、会いに来た。びっくりしたよ。僕たちは、順調に進んでいる自信があったからね。彼と君は完全に終わっていると思っていたから、

″今更、また君か!!″って落胆した。

今度は彼からスタバに呼び出されて、話をしたんだ。」


私はドキドキ胸の音がおさまらない。初めて聞く彼からの話に、動揺が隠せない。そんな私を優しく見つめながら、早川は穏やかに話を続けた。

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