第9話 クリスマスデート

大学三年生。

私と純一郎との関係と言えば・・・、特に変わりはなく・・・。


栞とのキスから舞い上がってしまっていた私は、純一郎からのメールを何度も読み返すことはなくなり、返事もすぐにではなく、翌朝だったりして。返信の内容が的外れだったらしく、さすがに3ヶ月くらい過ぎた頃、


"最近、素っ気ないね。もしかしてだけど、他に気になる人でもできた?メール迷惑?"


と、何とも不安げなメールが、とても短い文をポツリと送ってきた。いつもは、三回以上はスクロールしなくては読めない長文だったのに、その短い文に私は、"はっ"とさせられた。私は純一郎を傷つける…。栞に心が揺らいでしまったことで、全力でこちらに思いを綴ってくれている彼をないがしろにしてしまっていた事に気がつく。好意をもらっている相手としてだけではなく、友達としても誠意をもって向き合うべきだと反省した。


"ごめんね。最近、色々と忙しくてメール適当だったね。心配させたね。純一郎を迷惑だなんて思わないよ。これから気を付けるね。"


と、なるだけ丁寧に返した。


後から読み返したら、なんだか自分に都合の良いような内容のメールにおもえたのは、一時でも栞に心が揺らいでいた自分を自覚していたからかもしれない。彼がこのメールをどう思ったのかは分からないけど、それからは、純一郎にしては、それほど長くもないメールの文になった。呆れられたかも…。自業自得。不安だった。

数日後、その不安を払ってくれたのは、純一郎からのメールだった。

その年のクリスマス。

中間は皆、忙しくて集まる予定もなかった。


純一郎からのメール。


"12月25日何してる?今年のクリスマスはみんな、彼氏彼女、もしくは、家族で過ごすから集まる予定らしいけど、悠はなにするの?良かったら映画でもみて、飯でもいかない?"


純一郎からこんなメールが来たのは、クリスマスの一週間前の事だった。私は予定もなかったし、人生初のデートの誘いが素直に嬉しかったから、即答。


"宜しくお願いします"


彼からもその後直ぐに、25日の詳しい予定が送られてきた。私はきっと、このデートで何らかの決断をすることになるだろう。だって、未だ恋人になれていない二人が、数年越しに初めてデートするのだから。しかも、クリスマスの夜。絵に描いた様な恋人だらけの街で、私たちもきっと、まわりから見たら私たちだってそんな風で、辺りはキラキラしていて、

映画みて。

食事して。

いつかドラマで見て憧れたようなデート。きっと普段では思わない事だって思ったりするし、普段なら照れくさくて言わない事も言えたりして、見つめ合ったりもするのだと思う。仲間との関係を気にする私達二人だって、その日はお互いしか瞳に映らないから。特別な日になる。

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