第5話:紅蓮の決戦と湯煙の約束
星の癒結晶を手に入れた夜、砂の都・シャル・ヴァースの空に突如として“紅の月”が昇った。
それは古代から災厄の兆しとされる現象であり、同時に、癒しの封印が破られる“前兆”でもあった。
「いやな予感がする……」
ミミの声に、私も強くうなずいた。その直後——都の地下、封印されていた“熾焔の魔獣”が蘇ったという報が舞い込んだ。
「クラリス、あなたに関係してるわ」
「ええ……あれは、私の一族が封じた災厄。今度こそ、私が終わらせる」
魔獣の名は《ヴォル=エグル》。全身を紅蓮の業火で包み、怒りと破壊の化身としてかつて戦乙女たちが命を懸けて封印した魔物だった。
私たちは王子ラフィールの導きで、都の地下へと向かった。
そこには、赤く染まる溶岩の間に、目覚めたヴォル=エグルが咆哮していた。
「ガアアアアアアアッ!!」
「魔力の流れが不安定……このままだと都全体が——」
「止めるわ。私が、紅の血を継ぐ者として」
クラリスは剣を抜き、真紅の戦装束に身を包んだ。
「アヤ、ミミ、レオン、援護お願い」
「もちろん!」
「私の封術で、炎を抑えるわ!」
「前線は任せろ!」
戦いは熾烈を極めた。
ヴォル=エグルの炎は地を割り、天井を焼き、空間すら歪める灼熱。
ミミは冷気結界で味方を守り、アヤは温泉魔法で疲労を回復させ、レオンは炎を切り裂きながら獣の足を封じる。
そしてクラリスは、全身を光で包み、かつて母が使ったという技を発動する。
「奥義——《紅蓮舞・煉界斬》!!」
炎が逆流するように吸い込まれ、魔獣の中心へと突き刺さった。
「ガアアア……ァ……」
ヴォル=エグルは静かに崩れ落ち、灼熱は静けさへと変わった。
戦いのあと、都に穏やかな朝が戻った。
私たちは都の高台にある“紅蓮の湯”で傷を癒していた。
「……本当に、終わったんだね」
「うん。母も、きっと空から見てくれてたと思う」
「クラリス……あなたがいてくれて、よかった」
クラリスは照れたように笑いながら、湯船の縁にもたれかかる。
「こうして、湯煙の中で終わるのも悪くないわね」
その湯の中心には、小さな“紅の羽根石”が浮かんでいた。
それが、災厄を封じた証であり、クラリス自身が“受け継いだ癒し”そのものだった。
「これで五つの光がすべて揃った……残るは“最後の一つ”」
「……私たち自身の中にある光、だね」
「その答えを見つけに行こう」
湯けむりの向こうに見える空は、次なる旅路を予感させていた。
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