令嬢ミレーヌの異国薬草店 ~自由気ままに紡ぐ癒しの冒険譚~
@ruka-yoiyami
第1話:朝露に濡れた薬草園
朝の光が東の山並みから差し込む頃、ローラン公爵家の薬草園には既に一人の少女の姿があった。金色の髪を三つ編みにし、深い森の緑を思わせる瞳を持つ少女――ミレーヌ・ド・ローランは、手に古い革装丁の書物を抱えて、薬草たちの間を縫うように歩いていた。
「おはよう、ラベンダー。今日も良い香りね」
彼女は紫の花房に優しく触れながら、まるで古い友人に挨拶をするように微笑んだ。朝露に濡れた花びらが、指先に冷たい感触を残す。
薬草園は城の東側に位置し、四季折々の薬草が整然と植えられていた。カモミール、ローズマリー、セージ、タイム――どれも西方の伝統的な薬草ばかりだった。美しく手入れされた園だが、ミレーヌの心はここにはなかった。
「『東方薬草大全』によると、朝露に濡れた『月見草』は不眠症に特に効果があるとされている...」
彼女は古書のページをめくりながら、園の一角に咲く青い花を見つめた。これは確かに月見草に似ているが、書物に記された東方の月見草とは微妙に異なっていた。
「やはり、実際に東方の薬草を見てみたいわ」
ミレーヌの小さなため息が、朝の静寂に溶けていく。
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