第17話:秘密の夜、揺れる胸の声
夜の帳が静かに降りて、城は柔らかな闇に包まれていた。
月明かりが薄く差し込み、窓辺のカーテンを優しく揺らす。
私の心は、その静寂とは裏腹に乱れていた。
セレスト様の過去を知ったことで、胸にぽっかりと穴が開いたような喪失感と、不安が押し寄せてくる。
「彼は本当に私を必要としているのだろうか?」
そんな疑念が、幾度となく私を苦しめた。
けれど、同時に確かなのは――私は彼を愛しているという事実だった。
窓の外では、遠くで時折、夜鳥の鳴き声が響く。
その冷たい音が、一層孤独感を際立たせた。
突然、部屋の扉が静かに開き、セレスト様が顔を覗かせた。
「ミレーヌ……眠れないのか?」
彼の低く穏やかな声に、私は慌てて顔を背けた。
「……はい。色々考えてしまって」
彼はそっと部屋に入り、窓の外を見つめながら言った。
「過去は消せない。だが、未来は僕たち次第だ」
その言葉はまるで、夜の闇の中に射した一筋の光のようだった。
「私も、あなたのすべてを受け止めたい」
私は小さく呟いた。
彼が振り返り、静かに微笑んだ。
「ありがとう、ミレーヌ。君のその言葉が、僕の支えだ」
その夜、私たちは初めて心から繋がり合った気がした。
お互いの痛みと希望を分かち合い、揺れる胸の声を静かに聞いた。
夜は深まり、月が高く昇る頃、私の心にも静かな決意が芽生えていた。
どんな困難があっても、彼と共に歩む道を選ぶ――それが、私の答えだった。
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