1曲目 記憶をたどる

タイトル:夢と葉桜

歌:初音ミク

作詞・作曲:青木月光

URL:【本家】 https://www.nicovideo.jp/watch/sm15034898

   【紅さんver】 https://www.nicovideo.jp/watch/sm15064967

季節:夏 

初聴:中3(2015)

蓬葉No:499

蓬葉階級:6つ星/6つ星




 和風ボカロの一つ。ただし、千本桜のようなロックではなく、優しい思い出をなぞるような曲調。

 初めて聞いたのは紅さんverで、今でもこちらをよく聴く。


 ピアノが美しく、奥で響く鼓の音も心地よい。夏祭りのあと、静寂が包む夜の川沿いの堰堤を歩くような曲。


 2番では、弦楽器(ヴァイオリン?)の音が入り、どことなく切迫感・喪失感が強調されるような雰囲気がある。

 紅さんのcoverでは、2番Bメロ「月も~」からハモリが入り、ノスタルジーに駆られます。


 「川の流れ」から曲がはじまるところは、どことなく鴨長明『方丈記』を思わせます。


  行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

  淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためし

  なし。




 過ぎ行く春を惜しみ、蒸し暑い夏を嫌う。

 季節は秋へ冬へ、そして春へ向かう。いや、戻るというべきなのか。


 


 この曲を初めて聴いたのは中3末期。

 当時の私の中では「カゲロウデイズ」で有名な自然の敵P、「六兆年と一夜物語」で有名なkemu、「バビロン」や「エンヴィキャットウォーク」で有名なトーマといった初期ボカロ時代を彩ってきたアーティストの文化が一段落し、やや落ち着きのあるボカロ曲の視聴へと推移していた時期です。

 その中でもこの曲は、どこか根源に触れるような、不思議な感覚を抱かせる曲です。

 想太「いかないで」同様、夏祭り後の、「ハレ」から「ケ」へ戻る雰囲気が、私は好きなのかもしれません。もちろん、実体験としては苦痛でしかありませんが、好きなのです。





 そういえば、江戸時代の国学者伴信友の和歌にこんなものもありました。



  よしの山 花の名残りの 木のもとを なお去りやらぬ 人もありけり


 もともと日本では、花の時期だけを楽しむのではなく、散った後の桜を楽しむ感性があります。徒然草に、「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは」(桜は満開の時だけを、月はくもりのない時のみをみるものだろうか、いやそうではない」とあるように、古くから続いてきたものです。

 ハレもケも、どちらもいつくしむ。それを思わせる曲でもあります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る