第45話 メイベルの秘密基地

 跳躍靴を起動して窓の方へ向けて飛ぶ。

 ドラゴンの戦いのときに使ったアンカーがちょうどよかったので張り付けて窓を開錠(物理)で侵入。

 仲良くなりたいからこうやって直接会いに来たけどこんなことしたら余計遠ざかるんじゃないだろうか。


「よし、全員いるわね。メイベルー、私よ!マーガレット!」


 マーガレットが虚空に呼び掛けて数秒が経過すると唐突に床が開いて宙に放り投げられる。

 落ちるのを認識する最中、前世にこんな感じで落とされる番組があったのを思い出した。

 

「えっ、あっ、きゃああああああ!!!」


 二階分ほど落ちたところでやわらかいクッションに包み込まれる。どうやら怪我はないようだ。

 周りを見渡すと唐突に落とされたせいで髪がぼさぼさになって不機嫌そうなソフィーときゃっきゃとはしゃいでるステラが見えた。二人とも無事みたい。

 マーガレットが立ち上がって奥に座っている女性に話しかける。


「いつも言っているのだけどこの入り方なんとかならない?正直面倒くさいわ」


「だ、だってぇ、こうでもしないと安心できないよ......」


 そういいながら振り向くメイベル。

 黒い髪をぼさぼさにさせて眼鏡と白衣を身に着けている。よくイメージされるような研究者そのものの姿だ。


「そ、それでマリーは何の用で来たのか、かな」


「ああ忘れるところだった。紹介するわ。このかわいい子はノイフォンミュラー、ノルンよ」


「どうも~」


「で、こっちの不機嫌なのがソフィーリヤ、ソフィー」


「誰が不機嫌なの、よ。まぁとりあえずよろしく頼むわ」


「で、知ってるでしょううけどステラよ」


「久しぶりー!」


「ひぃっ!知らない人たちー!?」


 メイベルが私たちの姿を見て椅子の裏に隠れる。一応普段からつけてる錬金道具も外してきたんだけどそれでも怖いあたり普通に人が怖いタイプなんだろう。

 それでも、全員仲良く一緒の空間にいられるのが理想なんだから、ここから頑張って仲良くなっていこう。


「なんでほかの人なんか連れてきちゃったのマリー!!?マリー以外入らないって約束だったじゃん!!」


「だってメイベル貴女私以外知り合いすらいないじゃないの!この子たちはいい子だから!とりあえず、こっち、来な、さいっ!!」


 どかどかと椅子の方まで歩いて首根っこをつかむと無理やり引っ張ってくる。

 あの言い方は結構切れてる時のそれなので前々から気にしていたらしい。優しさではあるんだろうけどあれじゃ伝わらないんじゃないかな......。マーガレットらしいっちゃらしいけどね。


「あ、ごめんね。さっきも紹介してもらったけど、ノルンだよ。よろしくね、メイベルちゃん?さん?」


「あっ、はい、メイベル......です。かわいいのでメイベルちゃんでお願いします......建築とかインフラとかい、色々研究してます。フヘヒッ」


 おずおずしながらもとりあえずお互い自己紹介。

 話し合いの場には立てたんだけど、どうしよう。何を話したらいいかわからない。


「それでそのぉ、今日は何の用でここに......?」


「さっきも言った通りメイベルちゃんに興味があったからだよ」


 興味があるって単語を言った途端メイベルが顔を赤くしてきょどり始める。あ、言葉ミスったなこれ。


「きょきょきゅきょ興味ぃ!?ななななんですかエッチな話ですか!?」


「ち、違うよっ!」


「だだっだって、この前読んだ本にも興味があるって言ってそ、そういうことに及ぶ本を見、見たことある!」


 メイベルが唐突に妄言を吐き始める。だーれがエッチじゃい!

 それはその本がちょっと変なだけだしステラの前でそんなことを言うんじゃないよ!

 ってそれよりそんなこと言ったらソフィーが!


「ノルン......」


 あ、ダメだすっごく怒ってる。そういうところもかわいいけどこうなったソフィーとの夜は可愛くない結果になるんだから勘弁してほしい。

 何とか許してほしくて言い訳をする。


「あっ、ちが......はい、わかりました」


 ソフィーが綺麗に目以外の部位で笑っているのが怖すぎて言い訳なんてできるわけがなかった。


「どうしたの?お母さん」


「ん?何でもないよ。ただちょっと今日はマリーのところで寝てもらってもいい?」


「?いいよー」


 ソフィーを怒らせ徹夜コースが確定したところで話を主題に戻す。


「それで、メイベルちゃんとも友達になりたいし、一緒に遊びたいんだけど、どうかな?」


「あ、えっとマリーが連れてきてくれたから信用はしてるんです......ただやっぱり怖いのでちょっと待ってほしいというかそのなんというか......」


「一週間後!またここに来てください!その、一週間後なら準備が完璧なので!」


 なんだかよくわからないがとりあえず信用は得られたらしい。

 一週間後再びここに来るとしよう。

 

「じゃあまたねー!」


「あっ、はい。また......」


 メイベルに言われた通りの場所に立つと床が跳ね上がって元の部屋に戻ってきた。

 話し合いも終わったことだし、ホテルの予約を取っておこう。

 こんな形にはなっちゃったけどソフィーとするの久しぶりだし、たっぷり準備しよ。楽しみだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る