第34話 帰宅、私たちの家

 ドラゴンの肉体も全て武器や防具、その他もろもろに使い切り、私たちは久しぶりに家に帰ってきた。


「久しぶりに帰れるね」


「そうね、さすがにお風呂が恋しいわ」


 私たちが談笑しながら走って帰ること数分、十三区が見えてきた。

 門番に不審な目で見られつつ私たちの家に無事帰宅する。荷物を降ろして久しぶりにゆっくりとお風呂につかった。


「ふぁ~、お風呂、さいこぅ......」


「ノルン、私も入るからそこ開けて頂戴」


「うんー」


 私が依頼してソフィーに作ってもらった浴槽に二人で一緒に入る。

 懐かしいものだ、ソフィーは最初浴槽というものに懐疑的だったがいまではすっかり虜になっている。

 ざぶんとソフィーがつかる。水かさが増えてお湯が少しあふれる。


「あぁ~、ほんっとう気持ちいいわね。ノルンに感謝だわ......」


「そういってもらえると、嬉しいなぁ」


 久しぶりの湯舟、私たちは最高にリラックスすることができた。


「うりうり」


「ちょ、ちょっとノルン、や、やめ」


 なんだか物足りなくなってソフィーの身体にちょっかいをかける。

 最初は腕、次に足、最後は後ろに回ってもみもみと全身をやわらかくほぐしてあげる。

 最初は恥ずかしそうにしていたソフィーもいつの間にか黙っていた。私のテクの勝利だね!


「......もー我慢できないわ!覚悟しなさいノルン!」


「うわっ!あー!!」


 我慢できなくなったソフィーが私の上に乗っかって体を弄り始める。

 数十分後、すっかりのぼせた私たちは湯舟を上がり、床に転がっていた。


「あぁー、お風呂であんなことするもんじゃないね」


「そう、ね。次からは、上がってからに、しましょうか......」


 はぁはぁと息も絶え絶えになりながら私たちは床の冷たさを味わう。気持ちいい。

 そのまま私たちは十分ほどゴロゴロと転がって、体が冷えたので服を着てご飯を食べることにした。

 洞窟生活では野菜をあまり食べられなかったから今日は野菜天国だ。

 野菜スープにサラダ、大根みたいな見た目をしているドライカボッシュの根のステーキ、どれもおいしそうで我慢できない。今日は我慢できないことばかりだ。


「いただきまーす」


「いただきます」


 早速食べ始める。

 まずはスープ、野菜の出汁がしっかり取れててシンプルな塩の味が最高。

 サラダもドレッシングがさっぱり系でさっきまでのぼせていたから助かる。冷えていたのも高評価ポイントだ。シャキシャキしたサラダの中にクルトンが入ってるのも触感にアクセントが生まれて食べ飽きない。

 そしてメインのこのステーキ!見た目は大根みたいだが味は全然違ってて一切の辛みがない。肉厚な見た目に反してすっと嚙み切れる。

 

「んー、ソフィーの料理はやっぱり最高ー!」


「ふふっ、ノルンはいつでもおいしそうに食べてくれるわね」


 料理をすっかり食べきった私たちはゆっくりと眠りについた。


 


 朝、違和感に目が覚める。


「んー??」


 体を起こそうとすると何かが乗っかかっている。ソフィーかな。

 寝ぼけ眼をこすりながら目を開けると目の前には屈強な見た目をした女性がいた。


「貴様、ノイフォンミュラーであっているな?」


 眠気が完全に覚める。

 誰だこの人!?


「え!?なんですか!?」


 てかソフィーは!?

 あ、隣で寝てる。よかったー......ってそんな場合じゃない!よく見たらこの人の服、帝国軍のものだ。


「あっているのかと聞いている」


「え、合ってはいますけど......」


 困惑しながらも答える。私が何か犯罪でもしただろうか。

 いや、確かにやりはしたけどばれるような痕跡は残してなかったはずだ。現に数か月気づかれていなかったし。


「よし、そっちの女も起こせ。おそらくソフィーリアだ」


「あのー、何の用なんでしょうか......」


「それはついてから話す。もちろんついて来てくれるだろうな」


「え、あっ、ソフィーどうする?」


 隣で目覚めたソフィーにとりあえず尋ねてみる。


「いや私に聞かれても......とりあえず、行くしかないわよね」


「だよね......じゃあ、はい。行きます」


「よし、お前ら!連れていけ!」


 私たちはなにがなんだかわからぬまま馬車に乗せられた。

 目隠しがされて周りが見えないまま馬車に揺られる。いったいどこに連れていかれるんだろう。


「ソフィー、いる?」


「ええ、いるわよ」


「私たち大丈夫かな」


「まぁ、殺されるってことはないだろうし、大丈夫でしょ」


「のんきだね」


「まぁ、どんな時だって私たち二人なら大丈夫、でしょう?」


「そうだね!じゃあ大丈夫だ!」


 あっさりと不安を追い払えた私の様子を感じてソフィーが笑う。

 全然笑える状況じゃないのに、ソフィーと一緒にいるだけで問題ないように思えた。きっと今回も何とかなるだろう!

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