第19話 実践!新しい武器!
私たちはあの後ご飯を食べて、少し武器を使う練習をして、早めに寝ることにした。
流れで今日もソフィーの家に泊まることになったんだけど、やっぱりいい匂いがしてなかなか眠れなかった。
「ノルン、眠たそうだけど大丈夫かしら」
「え、あ、うん。ぜんっぜん大丈夫!」
「そう、まぁ早く顔洗ってきなさい。朝ご飯もう出来てるから」
あんまり深く追及されなくてよかった!ソフィーと一緒にいて緊張したからとか恥ずかしくて言えないもんね!
言われた通り顔を洗ってすっきりしてから食卓に着くと、すでにおいしそうなトーストとハム、それに少しの野菜が並んでいた。
「いただきまーす!」
「はい、めしあがれ」
さっそく出来立ての朝食を頂く。トーストの上に野菜、パンをのせて一口、うん美味しい!
野菜も新鮮だしパンの焼き具合も完璧!さすソフィ!
「今日もおいしいね、ソフィー!」
「んっ、まぁ私が作ったのだから、当たり前よ。それより、お腹にまだ余裕あるならこれもあげるわ」
ソフィーがチーズケーキを用意してくれていたみたいだ。
上部は綺麗に焼けていて、パンを焼くだけで焦がした私とは大違いだ。
しかもこのおいしさ!前世で食べたどのチーズケーキよりもふわふわしてて味の濃厚さがすごいの!
「ふふっ、美味しいみたいでなによりだわ。貴女が好きって言った時から作ろうって考えてたのだけど、正解みたいね」
辛抱できなくなった私はソフィーに抱き着く。
ソフィーが顔を真っ赤にしてたけどそんなところも本当にかわいらしい。
「ソフィーありがとぉぉ!大好きだよぉぉ!」
「ふぇっ!?ノルン!ちょっ、離れな、苦しっ、嬉しいけど離れて!」
「ごめん!つい嬉しくて、でもソフィーがそんなかわいいこと言ってくれたんだもん!ずるいよそんなの!」
ソフィーは恥ずかしさからかうつむいて何かを呟いている。
よく聞こえないけど恨み言じゃないといいな!
「......まったくもう、ずるいのはノルンの方じゃないの」
「何か言った?」
「なんにも!」
怒られちゃった。
そんなところもかわいいって言ったらまた怒られそうなので私はこれぐらいにして狩りの準備をして出発する。
時刻は九時ごろ、天候は快晴。まさに狩り日和ってやつだ。
いつもの森の入口に着いたので装備の点検を開始する。もしどこか故障してたら命にかかわるから、この時だけは私も一切ふざけない。
「......」
銃身に何か異常はないか、火薬がしけてたりしないか、どれか一つでもかけていたら命に係わるので緊張する。
よし、大丈夫みたいだ。
「ソフィー、こっちはできたよ!」
「私の方も問題ないわ、さぁ行きましょう!」
ソフィーはまるで勇者のような出で立ちで、私は猟師みたいな格好で、森の中に入っていく。
真剣な空気だから絶対に言わないけどちょっと絵面はシュールだと思う。
「とりあえず前に狩ったところまで来たけど、何もいないね」
「そうね、短期間で仲間が殺されてるからあっちも警戒してるのかもしれないわ」
言われればそうだ。
ゴブリンはあの見た目でそれなりに知能がある。群れの統率を取るゴブリンリーダーはさらに賢いというし、もう少し奥まで行く必要があるだろう。
「どうする、ここから先は群れの方が多そうだし、銃で狩り切れるか不安だけど」
「そのために私がいるんじゃない。さ、行くわよ」
足音を立てないよう慎重に歩く。
忘れてはいけないがここからはゴブリン以外にウェアウルフや運が悪いとオークも出てくる領域だ。
気を付けるに越したことはない。
そして歩くこと数分、三匹ほどの群れを見つけた。
「どうする、ソフィー、やる?」
「そうね、周りにもほかの魔物はいないみたいだし、やるわよ」
私が少し遠い場所から狙撃をする準備をして、ソフィーはその間に奥の方へ回り込む。
作戦通り、私が最初の一匹を仕留めてほかの二匹が混乱している隙をソフィーが狩る。本当は危ないからいやだけど、ソフィーが言うならやってやる。
「ふぅー......」
ゆっくりと狙いをつける。今まで何度も練習してきたんだ、今更外すつもりはない。
ソフィーからの合図が見えた、3,2,1。
パーンと銃声が響く。
ゴブリンたちが仲間の死骸に混乱している隙を逃さず近くにいた一匹を袈裟切り、そして二匹目が冷静になる前に頭に剣を深く突き刺す。
戦うのは初めてというのに、ソフィーは完璧にやり切った。
安堵して体の力が抜ける。よかった、誰もケガしなくて。
私は気から降りてソフィーの下へ向かった。
ソフィーは殺したゴブリンをじっと見つめている、その奥に何かいる。
「ソフィー危ない!」
群れから離れていた一匹のゴブリンの襲来。どうやら森の奥に見逃していた個体がいたらしい。
焦燥が口から滑り出る。
まずい、まずいまずい!
かろうじて私もソフィーも回避できたけど、今の出足をくじいている。次の対応ができない!
激痛が、今にもはじけそうな神経を通って脳を刺激する。冷たい汗が背中を伝う。
地面に倒れたソフィーの方に視線を向ける。無事だ。
それだけで、今にも意識が飛びそうな痛みがほんの一瞬、遠のいた。
怖い。
こんなことをやっているんだから、覚悟はしていた。していたはずなのに、体の震えが止まらない。
目の前に迫るゴブリンの影が、巨大な化け物のように見える。
せめてもの抵抗で、固く固く縮こまる。迫りくる衝撃を、必死に受け止めようとして。
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