えっちなバッドエンドしかない悪役令嬢に転生したってマジ?~陵辱確定キャラに転生したので、原作最強チート「精霊魔術」で無自覚にフラグをへし折ります―えっ、なんで女の子に囲まれてるの!?~

街風夜風

一章 精霊魔術編

第1話 ゲーム世界に転生したってマジ!?

 鏡に映る自分の姿をじーっと眺めていたら、ふと思い出しちゃった。

 

 わたし———ヴィオレッド・ロシュフォールには、女子高生だった前世の記憶がある。


 なにをバッカなー、と思うかもしれないけど、一番驚いてるのはわたし。

 前々からどうもおかしいとは思っていたんだ。

 ロシュフォールという名前には謎の既視感を感じていたし、極めつけはの派手な容姿!


 シワひとつない色白の肌に、胸元まで伸びる桃色の髪と、ピンクブロンドの瞳。ふくよかで、まだあどけなさの残る10歳の少女の姿に、「おや、どこかで見たことあるような?」と首をかしげたその瞬間。シャンメリーの蓋がポンっとはじけたような衝撃が脳内に響き、全部思い出した。


 ええっ、わたしって『truelove fantasy erotic』に登場するヴィオレッドじゃね!?

 ただの転生じゃなくて、まさかゲーム世界に転生とはビックリ。


 長年の喉のつっかえがとれて、爽快感がすんごいわ。

 やばい、転生って特別感があってワクワクする!

 記念にランチは最高級のホールケーキを、ひとりで食べちゃおうかしら。


 ところで、『truelove fantasy erotic』ってどんなゲームだっけ?


 えーっと、バレー部の後輩だった、ちーちゃんが「先輩面白いからやってみて!」と貸してくれたから全作プレイ済みなんだけど……。


 「んげぇろっ!?」


 踏みつぶされた蛙みたいな声が出て、全身からぶわーっと冷や汗が噴出した。


 そうじゃん!

 このゲーム、女性向けR18ゲームだ!

 女主人公が男達といちゃいちゃしながら、王国を侵略国家から守るシナリオで、わたしは主人公の邪魔をする悪役侯爵令嬢様!


 (ちょっ、ちょっと待って。これまずくない!?)


 なにがやばいって、このゲームのざまあ要素って、基本エロいんだよね。


 ヴィオレッドはすぐに癇癪を起こす問題児だから、陰で「子豚令嬢」なんて馬鹿にされていた。そんな彼女の結末は、全ルートにおいて凌辱エンド……。


 「はわわわわ」


 嘘でしょ。

 えっちなバッドエンドしかない悪役令嬢にわたしが転生したって、マジ!?


 「ムリ、絶対にムリ! 前世でも未経験なのに、初めてが無理矢理だなんて絶対にイヤっ!」


 バレー部の女子トークにすらついていけなかったのに過酷すぎる。

 皆が恋バナで盛り上がってる時に、友達に餌付けされてチョコパイをひたすらに頬張ってたわたしだよ。


 最悪な未来を想像してぞわぁーっと鳥肌がたつ。


「いやだぁぁ誰か助けてぇ!」


「お嬢様っ、どうされたのですか!?」


 カーペットの上で寝ころんでぺちぺち床を叩くと、部屋の外で待機していた白髪頭のオジサンが駆けつけて、わたしの豊満な体を抱きしめた。


「ぎゃぁぁ近寄らないでくださいましっ、汚らわしいっ」


「汚らわしい!?」


「犯されるぅぅぅ!」


「犯される!? 落ち着いてくださいお嬢様、ワシがそんな真似するはずがないでしょう」


「はあ、はあ、あっなんだジェフかぁ、ごめんなさい」


 あまりのショックで混乱して、長年お世話係をしてくれている執事のジェフを変態と勘違いしてしまった。


「ご、ごめんなさい!? お嬢様どうされたのです!?」


「え?」


 なにその反応。


「もしかして、頭を打ったのですか!? それとも悪魔に取りつかれたので!?」


「普通に謝ってるだけだけど」


「お嬢様が、しゃ、謝罪!? んな馬鹿なッ!」


 ジェフが自分のほっぺをつまむ。

 一度じゃ満足できなかったのか、何度も何度もつまんでほっぺが真っ赤っかだ。


「夢じゃない。これは大事件ですぞ。だれか医者を……いやエクソシストを呼べ!」


 おい、誰が悪魔付きじゃい。

 これじゃ私が謝れない癇癪持ちの子どもみたいじゃん……って、そうだったわ。記憶を取り戻す前のヴィオレッドって、そういう子だった。


 オ、オーホホォ、まあもう反省したので、ご愛敬ということで。


 しかし困った、困った。

 長年世話係をしてくれているジェフ相手でも取り乱すってことは、マジでもう男ってだけで身内以外は信用できないぞ。近くに異性がいるのを想像するだけで、犯されるんじゃないかって怖くて、ぞわぞわと身体が強張る。


 このまま何もしなければ、ざまあwされて、性に溺れた失楽園のような生活をおくる羽目になるんだ。

 

 (あぁ自由もお菓子も奪われた生活……そんなのって、生きている価値ないよ!)


「ふん、いいわ。世界中の男共が喧嘩を売ってくるなら……こっちから相手の〇玉をひねりつぶしてやるんだから!」


 ヤられるまえにってやる。

 この瞬間、わたしの中で弱肉強食の荒野をサバイブする運命が確定した。

 そのためにはどんな困難も跳ねのける力が欲しい。


「き、〇玉!?あわわ、やはりお嬢様の頭がおかしくなってしまった!」


「ジェフ、わたくしは己の尊厳を守るために死ぬ気で努力して強くなりますわ!」


「努力!? あの食い意地しか能がないお嬢様が!?」 


「ねえ、さっきからわたしの評価低すぎない?」


 くっ、解雇してやろうかコイツ。

 ま、まあいい。これから変わっていけばいいのよ。


 そして、もう一つの方針!

 メインキャラ達には絶っっっ対に関わらないこと。


 原作のヴィオレッドは、ウザいだけの小物キャラ。物語の重要度は低いし、私が何もしなくても、主人公たちが勝手に真実の愛とかに目覚めて王国を救ってくれるだろう。


 魂が小市民のわたしには、王国を救うとかはあまりにも問題が壮大すぎる。


 ニュースで貧困国の子供達が苦しんでいて……って見れば同情はするけど、やっぱりどこか非現実的で、せいぜいコンビニのおつりを募金箱に入れるくらいの行動力しかない。


 身の丈に合わない問題に頭をつっこんでも自滅するだけ。

 

 第一に考えるべきは、己の貞操を守ることである。よって、導き出されたわたしが目指すべきポジションは、最強のモブ!


 目立たず、されどいざとなれば自分の貞操を自分で守れる強い女。大丈夫。この明晰な頭脳の中には原作知識が詰まってる。最後までチョコたっぷりのト〇ポのようにね!

 

 そして、どうせならこの世界を思う存分楽しもうじゃないか!


 怯えてるだけなんてつまらないもの。人生なんて楽しんだもの勝ち。平穏なモブライフをおくりつつも、非ネームドキャラの女友達をじゃんじゃん作って、幸せに生きたい。


 (友達100人くらいできたらいいなぁ)


 さて、まずは魔術の訓練だ!

 幸いにもヴィオレッドのスペックはネームドキャラなだけあって、そこそこ優秀のはず。砂場の泥だんごも磨けば光るんだし、いけるっしょ!


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