第三章 山下藤子の物語 交通事業チーム
惑星世界管理局の計画
デーヴァ宇宙の開発は正式に動き始めた。
平行軽便鉄道の移管問題は決着し、ユニバースは貨物鉄道簡易軌道というものをひねり出し、問題を解決したようだ。
敷設費用も激安で、新開発の『オービターボムシリーズ』はミリタリーに全面採用され、ユニバースの評判もうなぎ上り……
そこでプラネテスを管轄するネットワーク・オフィスとしては、対抗上、貨物鉄道簡易軌道よりさらに『お安い』交通手段をひねり出すことに……
* * * * *
「藤子さん、デーヴァ宇宙開発、本決まりとなったわ」
六条さんが、わざわざ惑星世界管理局にやってきて云いました。
「例のヴィーナス様の『へそくり』、イシス様が巻き上げたでしょう?予算は大丈夫よ♪」
「今回、うちとしては開発経費は丸のみしてあげるわ、レイルロードの敷設計画、提出してね♪」
常とは真逆の事を云っている六条さん。
「軽便鉄道殖民軌道をメインにするの?」
「開通当初の運行はその通りですが、本線は軽便鉄道規格として敷設、支線は軽便鉄道殖民軌道規格とします」
「別に軽便鉄道規格線に、軽便鉄道殖民軌道規格の列車を走らせても問題はありません」
「軽便鉄道は未開発世界の監視が目的です、貨物鉄道簡易軌道も同じ目的で遥かに安いのです」
「ただユニバースの規格では旅客鉄道と貨物鉄道は別の運行計画で、その上に貨物鉄道簡易軌道も別の運行計画となります」
「レイルロード運行担当はこれらの調整もしていますが、そもそもワープの距離が違うので、そう難しいことはないのですが、基本的に軍事が優先なのです」
「宇宙開発となれば、そこにある惑星世界の開発、発展が求められます」
「軍事優先では、開発発展のスピードが心もとない」
「ある程度、落ち着いたら簡易鉄道に切り替え、軍事優先となっても平時の発展には支障がないはずです」
「旅客も貨物も監視も、一元的に管理できるのが軽便鉄道です」
「ティアマト宇宙の開発では、軽便鉄道の有効性が立証されています」
「軍事的に問題ない宇宙の場合は、プラネテス所轄の軽便鉄道を敷設、落ち着いたらユニバースに移管すべきでしょう」
「もちろん、軍事的問題がある場合は簡易鉄道などのレイルロードになります」
「ガブリエル様がおっしゃるには、基本的には軽便鉄道はレイルロードから分岐する盲腸線ということらしいのです」
「ネットワーク・オフィスとしては、レイルロードはユニバース、そこから分岐するローカル交通網はプラネテスと考えているようです」
「惑星世界管理局としては、ネットワークの動脈であるレイルロードにつなげる、何らかの新しい移動手段を考えたいのです」
「アマテラス様の意向を受け、惑星世界管理局としてはネットワーク全域を視野に入れる為に、新交通手段は貨物鉄道簡易軌道より安いもの考えているのです」
「貨物鉄道簡易軌道は軽便鉄道殖民軌道より安いのよ、無理な話と思うわよ?」
「それともなにか考えでもあるの?」
「貨物鉄道簡易軌道のオービターで、ミリタリー内でもめた話を知っていますか?」
「レイルロード運行担当のタマル様がオービターを計画されたのですが、兵器の搭載を求められたとか」
「そこでガブリエル様にそのことで相談したら、天山宇宙戦闘艇に搭載されているビーム砲を、一門載せればどうかと教えていただきました」
「専用の小さい補助動力機関は、二射ぐらい可能な極小のバッテリーとして計算したら、ビーム砲一門当たりの原価は本当に安いことがわかりました」
「貨物鉄道簡易軌道はレイルロードシャトルの単行で問題を解決したようですが、当方は宇宙船に搭載されている『脱出艇』を活用すべきと考えています」
「脱出艇?『キュービック』の事よね、たしか新型に更新されたわね……」
「そうなのです、貨物鉄道簡易軌道は、旧式ボンバーをうまく使いましたが、当方もこのアイデアを拝借して、旧式の脱出艇に着目したのです」
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