第6話 窓の礼儀

 人がまばらな終車、窓に映る自分が一瞬だけ遅れて動いた。わずかな遅延音が、耳にこびりつく。


 気のせいだと思い、次の駅で再確認。……映った自分が、じっとこちらを見て、ふっと頭を下げた。まるで鏡の中の自分が、独立した意志を持ったかのように。礼をするとき、映り込みの後ろに、更に私が立っていた。


 その“もう一人の私”は、ゆっくりと口角を上げ、不敵に笑った。ガラス越しに、その笑い声が聞こえたような気がして、全身の毛が逆立った。

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