第10話:とりあえず脅威は去った。

ラボに着げてきてからも与四郎と彩葉は同じ部屋で生活していた。

平和に数週間が過ぎてとある日、僕たちは教授から呼び出された。


「じつはこれは森沢君が拉致される前から流れていた噂なんだがクライム

クライム・グローバル社は5000億円と言う資金横流しの疑いで検察の調査が

入ったうえ、社長の高崎に脱税の疑いが浮上して税務署が家宅捜査に入った。


だから彩葉どころでなくなったようんだな。

ただバッドポーポーの奴らは深く静かに潜行したままだ・・・またいつ彩葉が

狙われるか分からん・・・様子見ってところだな。


こうして彩葉はクライム・ブローバル社からは解放された・・・。

グローバル社から彩葉いろはを奪還してから弟と彩葉は別の部屋で

生活していた。

とある日、ふたりは博士から呼び出された。


「さて、これからどうしたもんかな」


「僕はまた学生に戻ります」

「できるものなら、また教授の下で研究を続けたいと思ってます・・・」


「そうか、そうしたければそうしたまえ」

「だが、わしはもう引退するよ」

「今回のことで、よ〜く分かった・・・」

「自分の欲望を満たすために君を含め多くの人に迷惑をかけることになった」

「人としてもモラルを欠いた行動だった」


「じゃ〜彩葉はどうなるんですか?」

「彩葉の育成はこの研究所の次世代に受け継がれて行くんですか?」


あれだけ、自分は自由だって強気だった彩葉は不安そうな顔で与四郎と教授

の顔を交互に見ていた。


「いや、それももうよかろう」

「彩葉はモルモットじゃない・・・れっきとした人間なんだよ、森沢君」

「彩葉も言ったようにこの子は自由だ」

「わしはね、彩葉は、彩葉自身がもっとも信頼を置く人と一緒にいるのが一番

いいと思ってるんだよ 」


「わしは君と彩葉が過ごした日々を見てきた」

「君たちはお似合いのカップルじゃないか?」

「今後は君たちの納得がいくまで一緒にいればいい・・・」


「本人がいる前でなんだが正直、今の段階では彩葉はいつまで生きるか

分からん・・・」

「なんせバイオロイドが成功した前例がないからな」

「もしかしたら人間と同じ平均寿命まで生きるかもしれない・・・」

「それは分からんのだよ」

「それでも・・・彩葉を引き受けてくれるかね」


「もちろんです」


彩葉は何も言わず与四郎に抱きついた。


「教授、僕は彩葉を心から愛しています」

「彩葉だって僕を・・・」

「たとえ、この先彩葉がどうなろうと僕は研究を続けて必ず彼女を守って

みせます」


彩葉は教授のほうを見てうなずいた。


「決まりだな・・・彩葉を連れて帰ってよし」

「どっちみち彩葉を君に預けた時に、この子はこの世からいないことに

なってるんだからな・・・」


「分かりました・・・彩葉帰るか?」


彩葉は潤んだ瞳でうなずいた。


「与四郎・・・キスして・・・」


「あ〜こんなところで、いちゃいちゃはやめてくれ」

「最近の若い者は人目をはばからんからいかん」

「恥じらいというものを知りなさい」


「私こそ先に帰るぞ」

「おまえらのラブシーンなんぞ見たくないからな」


「冗談だってば・・・真に受けてホームレスお父さん」


彩葉は教授を指差して腹を抱えて笑った。


「人に指を指すんじゃない」

「そんな冗談まで言えるようになったのか・・・歳寄りをからかいおって」


それからも大学で暮らした与四郎と彩葉はラボに顔を出して教授に「さよなら」

を言ってからマンションへ 帰るところだった。


ふたりは久しぶりに空を見た気がした。

見上げた空は雲行きが怪しくて、今にも雨が降ってきそうだった。


「雨が降りそうだね」


「降り出さないうちに帰ったほうがいいかな・・・」

「それに、彩葉を連れ歩くとまた誘拐されると困るし・・・」


「大丈夫だよ、またバッドピーポーのヤツラが現れたら今度は組織ごと

ぶっ潰すから・・・でももし誘拐されたら今度は与四郎が救い出しに来て?」


「おう・・・命をかけてね・・・スーパーカブで駆けつけるから」

「それに君を誘拐なんかさせない・・・」


「うん・・・」


「あのね・・・バカみたいに思うかもしれないけど・・・私でいいんだよね」


「なにが?」


「だからエッチ・・・私でいいんだよね」


つづく。


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